桃田健史(自動車ジャーナリスト)

 全国各地で高齢者ドライバーが歩行者を巻き込んだ事故が続いている。そのため、数多くのテレビ、ラジオ、そしてネットのメディアが「高齢者ドライバーの事故をどのように防ぐべきか?」という特集を組み、筆者にも同事案について各方面から出演や執筆依頼が相次いだ。そうしたなかで、番組ディレクターや編集者のほとんどが「前半は高齢者ドライバーの話で、その流れで後半は自動運転でお願いします」というリクエストをしてきた。

 確かに、高齢者ドライバーの事故を軽減するためには、ハードウエアとしてのクルマの安全性能を上げることが最も効果的だ。とはいえ、「自動運転になれば、高齢者が皆、幸せな毎日を送れる」という筋書きに対して、筆者としては違和感がある。

 地域社会の中では、交通を含めて「自助・公助・共助」という理念が今後も必要不可欠。その中で、地域交通のすべてが自動化されるのではなく、地域の諸問題が解決できうる場合に限って、自動運転を適合する努力をするべきだ。あくまで自動運転は近未来の交通の「方法論の一つ」に過ぎない。
G7交通相会合でトヨタ自動車の自動運転車に乗り込む米フォックス運輸長官。日本政府関係者が固唾をのんで見守る=9月24日、長野県軽井沢町
G7交通相会合でトヨタ自動車の自動運転車に乗り込む米フォックス運輸長官。日本政府関係者が固唾をのんで見守る=9月24日、長野県軽井沢町

自動運転は大きく2つに分類


 自動運転について論じる際、基礎知識として知っておいて頂きたいことがある。それは、自動運転には大きく2つの種類があることだ。一般的に、この認識がないため、自動運転に関する勘違いが横行し、その結果として多くのメディアが自動運転に関する最新の動向を正しく伝えていない。

 順を追って説明すると、一つ目の自動運転とは、ADAS(アドバンスド・ドライバー・アシスタンス・システム)進化型である。最近の新型車には、「自動ブレーキ」と呼ばれることが多い衝突被害軽減ブレーキ、前車との車間距離を一定に保つクルーズコントロール(アダプティブ・クルーズ・コントロール)、そして車線逸脱防止装置などが標準装備されている。そうした機器の総称がADASだ。自動車メーカーは、このADASの機能をさらに向上させることで、運転の自動化の度合いを徐々に引き上げていく計画だ。

 その度合いについては現在、アメリカの自動車技術会(SAE)が2013年に設定したレベル0~レベル5という区分けを採用することが多い。日本はこれまで、政府も自動車メーカーも米運輸省が2013年に設定した、レベル1~レベル4を使用してきた。だが、米運輸省が2016年9月に自動運転のレベル表記をSAE方式へ転換すると発表したため、日本でも今後はSAE方式が採用される。

 つまり、ADAS型自動運転の開発とは、手動運転のレベル0を基点に、人間が運転の主体となるレベル1~3を経て、レベル4~5というシステムが主体となる高度な自動運転を目指すのだ。現在、ADAS型を推進しているのは、既存の自動車メーカーだ。『日産セレナ』の「同一車線・自動運転機能」、また米テスラ『モデルS』『モデルX』や独ダイムラー『メルセデスEクラス』の「自動運転機能による車線変更」などは、レベル2に相当する。