一方で、最初からレベル4ないしはレベル5を狙う開発を進めるのが、完全自動運転型。または、無人運転(=ドライバーレス)型ともいう。こちらを推進する代表例は、米グーグル(親会社はアルファベット)。日本では、DeNAの「ロボットタクシー」や、ソフトバンクの「SBドライブ」など、ベンチャー企業が積極的に開発を進めている。こうした、「ADAS進化型」と「完全自動運転型」それぞれについて、日本の政府は来年度から3年間に渡り、公道などでの実証実験を行う。そのため、来年になると、メディアはこぞって同実証実験の模様や今後の動向について報道するはずだ。

レベル3から4への大きな壁


 現時点で、日系自動車メーカーは完全自動運転型について否定的な立場をとっている。それは至極当然のことだ。なぜなら、完全自動運転は、ADAS進化型における「最終到達点」であり、達成目標は2025年以降に設定しているからだ。

 ADAS型の開発に、どうしてそれほど時間がかかるかというと、レベル3とレベル4の間に、技術的に大きな壁があるからだ。レベル3までは、クルマの操縦の管理の主体はドライバーにあるが、レベル4からはシステム(=クルマの制御系統)が主体となる。そのため、レベル3とレベル4との間では、管理責任の所在が行き来することになる。

 そのなかで、課題はレベル4からレベル3に戻る時だ。この場合、ドライバーが寝てしまっているケースが考えられ、手動運転への復帰を確実に実行することが難しい。自動車メーカー各社は、車内のモニタリングを徹底する研究などを進めている段階だ。

 一方の完全自動運転型については、レベル4またはレベル5のみの走行であり、面倒な手動運転と自動運転の切り替え作業がない。IT企業はこの点に注目しており、「専用空間で、遠隔操作(または管理)を前提に行えば、ADAS進化型より安全性は高く、コストは安い」と主張している。

グーグルが公道での走行試験を行っている
トヨタ自動車の「レクサス」をベースとした自動運転車。
グーグルが公道での走行試験を行っている トヨタ自動車の「レクサス」をベースとした自動運転車。
 以上のように、自動車メーカーとIT企業がそれぞれ独自の自動運転事業の開発計画を練っているなか、自動運転技術や、自動運転の道路交通法の解釈に関する基準化の議論が進んでいる。

 その舞台は、国際連合の欧州経済委員会(UN-ECE)における、自動車基準調和世界フォーラムだ。自動車の安全・環境基準についてはWP29、また自動車の道路交通規則についてはWP1と呼ぶ枠組みで参加加盟国が議論が重ねている。そのなかで、日本は重要なポジションを確保している。

 だが、こうした基準化とはまったく別に、アメリカではIT系企業が連邦政府に対する積極的なロビー活動を続け、自動運転技術に関するデファクトスタンダード(事実上の標準化)を握ろうとする動きが目立つ。

 さらには、来年1月以降のトランプ政権において、アメリカの強みとして自動運転のデファクトを政府自らが推し進める可能性も十分にある。これから先の数年間、自動運転に関する動向から目が離せない。