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 Wedge編集部

 九州電力が9月24日に再生可能エネルギー発電設備の電力系統への接続申込に対する回答を保留したことを皮切りに、最終的に電力5社(北海道、東北、四国、九州、沖縄)に同様の措置がとられていることに波紋が広がっている。「もっと早く受付を保留にすべきだった」、「接続申込量よりも実際に運転開始する設備の容量は小さいから、接続はまだ受け入れられる」との批判がある。

 しかし、これは日本の固定価格買取制度(FIT)で設備認定から運転開始に至る実際の手続きをよく理解していない、的外れな指摘である。

 後述するが、日本のFITでは買取価格の確定が「設備認定時点」となっており、諸外国が「運転開始時点」となっているのに比べ、時期が早い。この制度を悪用して、先に設備認定を国に申請して、高い買取価格を確保しておき、その後太陽光パネルなどの価格が下落していくのを待って運転開始させるという、通称「空枠取り」が多数発生している。さらに、「空枠取り」で買取価格の権利等を先に押さえ、他者に転売するブローカーが横行し、転売のたびにつみあがった手数料でコストがかさみ、結局事業断念に至る事例も多い。

 問題の本質は、実際にどれだけ運転開始に至るのか誰にも分からない制度設計にある。こうした中で、申し込みが急増したいま、電力会社が接続申込を受け入れる「供給承諾」を保留したのは現実的な判断だったと言える。

買取価格確定と系統接続確定が別タイミング


 ややテクニカルになるが、再エネ設備が設備認定を経て運転開始に至るまでの手続きは次のようになっている。
固定価格買取制度における運転開始までの流れ (出所)経済産業省
 エネ庁の資料(新エネ小委員会 系統ワーキンググループ第1回配付資料3、p.10)に示されているように、手続きは、[1]任意の事前検討、[2]設備認定・系統アクセス検討依頼・接続の本申込、[3]電力会社による供給検討と回答(供給承諾)、[4]契約締結と運転開始の4段階である。

 日本のFITで買取価格が確定するのは、[2]設備認定等の段階である。ここでは、エネ庁が設備認定を、電力会社が接続可能性を並行して審査・検討する。エネ庁の設備認定を経て、電力会社に正式な接続契約(接続の本申込)を申し込んだ時点で適用される買取価格が確定する。なお、設備容量50kW未満の低圧接続に関しては、電力会社への接続検討自体が不要とされており、国の設備認定のみで買取価格が確定する。

 しかし、電力系統の接続費用が最終的に確定し、接続できるか否かは、[3]電力会社による供給検討と回答(供給承諾)を経た契約締結によって確定する。つまり、[2]の接続検討では系統連系工事の概要や工事費の概算を示すに留まり、その後事業者の本申込が行われた後の[3]のステップで系統接続の優先順位が確定することで、詳細工事の設計・費用が確定する。今回の接続保留は、[2]の接続検討の回答、あるいは[3]の本申込に対する回答(供給承諾)を保留しているという状態を指している。

空枠取りを見極めるために設備保留判断が遅れる


 冒頭の「もっと早く保留にすべきだった」という問いについて考えてみよう。九州電力を事例に接続保留に至った経緯を振り返ってみる。

 確かに、[2]段階の設備認定量だけで判断すれば、6月末にはこうした事態に至ることは予見できた。6月18日にエネ庁から公表された資料で今年3月末までの九州電力管内の設備認定容量は1755万kWにも達していることが明らかになる一方で、これは5月16日にエネ庁の需給検証で示されていた九電の夏の最大電力需要を上回っていた(電力需給に関する検討会合「2014年度夏季の電力需給対策について」)。その意味で、この設備認定全てが受け入れられないことは自明だったが、どちらも公知情報をつきあわせれば分かることで、6月下旬の時点で関係者や研究者で知らぬ者はいなかったようだ。

 しかし、この段階で接続保留を行えば、それこそ「まだ認定段階なので、事業断念があるから接続は可能だ」とする反論があっただろう。また、制度上、3月末までの認定容量1755万kWの中で低圧接続される50kW未満の設備については、電力会社への系統アクセス検討(前述の[2])が行われない。また、50kW以上についても、接続本申込を経た上では事業断念する案件は少ないと思われることから、実際の接続申込量を見極めようとしていたと考えられる。

 実際、九州電力の資料をよく読めば、認定量だけでなく、接続本申込量を示し、「2014年7月末時点の太陽光発電の接続契約申込み量が全て系統に接続された場合、太陽光と風力の接続量は約1260万kWに達し、これら全てが発電すると、電力需要が小さいゴールデンウィーク等の昼間の消費電力(約800万kW)を太陽光・風力による発電電力が上回るため、電力の安定供給が困難となる」として接続保留を発表している(「九州本土の再生可能エネルギー発電設備に対する接続申込みの回答保留について【詳細説明資料】」、p.5 )。

問題は設備認定時点で買取価格が確定する制度設計


 したがって、本質的な問題は、設備認定量あるいは接続申込量のいずれの段階でも、実際にどれだけ運転開始に至るのか誰にも分からない制度設計にある。換言すれば、我が国FITでの買取価格の適用時期が、ドイツ等の主要なFIT導入国のように設備の運転開始時点や、少なくとも電力会社との契約時点であれば、今回の接続保留を巡る「既に投資しており損害が発生している」といった批判は避けることができただろう。

 前述のエネ庁資料で記されているように、本来、再エネ発電事業者による自己資金や融資等の実施は、契約の締結時点を経てから実行することになる。これは系統アクセスの接続費用が最終的に確定していない、あるいは接続できないリスクがあるからだ。ただ、小規模事業者や個人投資家等の間には、「設備認定を受けて買取価格が確定したと思ったので、投資を既に行った」、あるいは「そもそも設備容量50kW未満の低圧接続であれば、電力会社による系統アクセス検討は不要だったので、当然接続できると考えていた」といった不満があるようだ。

 これはあまりに事業者のFIT関連法規に対するリテラシー不足と言えないだろうか。また、今年度の認定から50kW以上の太陽光発電はエネ庁の認定後180日以内に場所及び設備を確保できない場合は認定が失効する解除条件を定めており、設備発注等の手続きを契約締結から早めるように促していた。いずれにせよ、そもそも、買取価格の確定が契約時点であれば、上記の混乱は生まれなかったはずである。

 買取価格の適用時期が認定時点であることによって、多くの問題が引き起こされてきた。弊誌は他のメディアに先駆けてこのテーマを取り上げてきたのでご覧いただきたい(記事「バブルが始まった太陽光発電」など)。