だが、トランプ当選以降、アメリカの経済政策はこう着状態から事実上脱した。トランプ次期政権の経済政策の根幹は、大規模な財政政策だ。他方で減税政策も採用するといわれているため、将来的には国債の増発が予想される。国債の増発は国債価格を引き下げ、同時に国債の利回りを上昇させる。実際にトランプ当選直後から10年物の米国債の金利が急騰している。現状では約2.6%であり、約0.1%の日本を含めて各国との金利差は急上昇している。
(AP)
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 特に日本の場合は、日本銀行の新しい政策手段で、10年物の国債の金利をゼロ近傍に維持することが公約されている。このため米国債との金利格差は将来にわたって拡大ないし維持されることが予想される。日銀とトランプ氏の経済政策は実に「相性」がいいのだ。

 日米の金利格差は、投資家にはドル建て資産(高い利回り)を購入し、円建て資産(低い利回り)を売却する動きを促す。これはドルを買い、円を売る動きの加速化につながる。そのため上述したようにドル円レートは円安に一挙に進んでいる。これは教科書的な現象である(参照:藤井英次『コアテキスト国際金融論』新世社他)。

 また円安の定着は、日本企業に主にふたつの経路をもって影響を与える。ひとつが輸出に寄与することであり、もうひとつは日本企業のバランスシートを改善させることである。後者は簡単にいうと、日本企業の負債は円建てなので急激に圧縮し、他方でドル建て資産の価値上昇により、バランスシートの改善がもたらされる。このような企業のフロー(収益)、ストック(資産)両面での改善が予測されるので、株式市場ではこの予測をもとに日経平均株価やTOPIXなどの指数が上昇していく。

 株、国債、そして為替レートなどの資産の動きを読み切ることはできない。いま描いた図式に沿って、単調に事態が推移していくわけでもなく、時折の変動をみることだろう。ただ片岡氏らの指摘してきたように、世界経済の動乱の根源が、アメリカの経済政策の事実上の「失敗」にあったならば、それが解消されつつある現在、株価や為替レートも世界経済の動乱が本格化した2015年夏頃までの水準に戻っても不思議ではない。ちなみに資産運用は個人の責任で行っていただきたい。