三木雄信(ジャパン・フラッグシップ・プロジェクト社長)


元社長室長が語る「先読みの極意」


「日本を代表する経営者は?」という質問に、孫正義・ソフトバンク社長の名前を挙げる人は多いだろう。数々の新規事業を成功させ、国内外の有望な企業を発掘しいち早く提携するその眼力の秘密を、ぜひ知りたいと思っている人も多いはずだ。ではなぜ、孫正義氏は未来を見通すことができるのか。ソフトバンク元社長室長として、孫氏を間近で見てきた三木雄信氏。著書『ソフトバンクで孫社長に学んだ 夢を「10倍速」で実現する方法』を発刊した三木氏に、その「極意」をうかがった。
 

孫正義は「タイムマシーン」を持っている!?

 孫正義社長の経営は「タイムマシーン経営」と言われることがよくあります。まるで未来を見てきたかのように、のちに大きく成長する事業や企業を見抜いて、早い段階で先物買いをしているからです。
米国次期大統領ドナルド・トランプとの会談の後、取材に応じるソフトバンクCEO孫正義氏=2016年12月6日
米国次期大統領ドナルド・トランプとの会談の後、取材に応じるソフトバンクCEO孫正義氏=2016年12月6日
 たとえば、アメリカのYahoo!に200万ドル(当時の為替レートで2億円)の出資をしたのは1995年11月のこと。アメリカのYahoo!が会社として事業を開始したのは、1995年3月です。つまり設立から間もない段階で、孫社長はこの会社に価値を見出し、思い切った投資をしたことになります。

 そして結果は、ご存知の通り。Yahoo! は世界最大級の検索エンジンに成長し、Yahoo! JAPANもポータルサイトとして日本で圧倒的なポジションを占めています。

 最近では、中国のインターネット通販企業アリババ。ソフトバンクは、アリババが創業した翌年の2000年に20億円を出資し、その後、同社は急成長を遂げます。そして2014年にニューヨーク証券取引所に上場したことで、株主のソフトバンクは8兆円の含み益を得ました。投資から14年間で、4000倍のリターンを得たわけです。
これらの事例を見れば、タイムマシーン経営と言われる理由も納得がいくはずです。
 

「未来を読む」ことは誰にもできない

 では果たして、孫社長は本当に「未来を読む達人」なのかというと、実は、そんなことはありません。

 もちろん、私を含む一般の人たちよりは、はるかに先を見通す力を持っていることは確かです。しかし、長年そばで見ていてわかったのは、孫社長の予測も外れることがあるという事実です。考えてみれば、孫社長も人間なのだから、百発百中で未来を言い当てることなど不可能なのは当たり前です。

 そもそも孫社長自身も、「未来は読むことができない」という前提で物事を考えています。とくにITの世界の不確実性は、他の業界に比べて非常に高いものです。

 では、なぜ孫社長は、まるで未来を見てきたかのように、次々と成功を引き寄せているのか。その秘密こそが「くじ箱戦略」です。ソフトバンクがここまで成長を遂げた最大の理由は、ここにあると言っていいでしょう。