シリコンバレーは沸き立っていることであろう。500億ドル=約5兆7千億円をスタートアップ企業に投資するというのだ。日本のGDPはアメリカの約四分の一である。渋谷のビットバレーに、4分の一の約1兆4千億円も投資されるとなったら、日本のベンチャー企業は大いに沸き立つ。

 今回の孫氏の投資は世界にIoTバブルを引き起こすであろう。「バブル」というと悪い印象がある。しかし、将来の期待がなければバブルは起きない。孫氏はITバブルの大波に乗って軍資金を手に入れ、世界に雄飛した。バブルは、次代を拓く経営者に軍資金を与えるのである。ビル・ゲイツはITバブル真っ最中の1999年、記者団の「今はバブルではないか」というしつこい質問にこう答えた。

 「ああ、もちろんバブルだよ。でもあなた方は肝心な点が見えていない。このバブルは、今まさに新たな資本を大量にこのインターネット産業に吸い寄せ、イノベーションをどんどん加速させているんだよ」

  残念ながら渋谷のビットバレーに投資しても世界は動かない。シリコンバレーが動いてこそ世界は動く。2017年はIoT革命、IoTバブルのスタートの年になるに違いない。そして、世界の資本をIoT産業に吸い寄せ、イノベーションをどんどん加速させるのである。

政治と経営


 「孫社長のことだから(トランプ大統領の)携帯電話番号くらいは聞いているのではないか」とフジテレビの取材に答えた。インドのモディ首相など孫氏がさりげなく携帯電話番号を聞くのは氏の常套手段だからだ。

 その10日後の16日、孫正義社長が日ロ首脳会談に合わせて東京で開かれた財界人らによる「日露ビジネス対話」の全体会合に現れた。孫氏はプーチン大統領の近くに指定席を用意された。ロシアのプーチン大統領と肩を抱いて親しげに話し合った。

孫氏は記者団に「トランプ米次期大統領と電話で話す予定があり、プーチン大統領からも『ぜひよろしく伝えてくれ』と頼まれた。今度、我々は米国に投資するが、『ぜひロシアにも』と頼まれた」と記者団に話した。アメリカ大統領と一民間人である孫正義がホットラインでつながっているとは驚きである。

 孫氏とプーチン大統領のつき合いは二十一世紀初め、大統領就任前の政権準備期間から始まる。当時、IT長者だった孫氏を、ウルフォウィッツ世界銀行総裁(当時)が紹介したという。当時、ロシア経済は疲弊しており、「日本人で初めてプーチンに会ったのですよ。そのとき、会った若者たちが、皆、プーチン政権の閣僚になっていきました」と私に話していた。

 今回、政権交代準備期間中のトランプ次期大統領に会ったのもこの成功体験があったからであろう。残念ながら、このときは会談すぐにITバブルが弾け、ロシアへの投資はならなかった。それから十五年、満を持して孫氏はロシアに投資することになる。