小林信也(作家、スポーツライター)

 今年の競馬界は、スターホースとともに「馬主」が話題になった年でもあった。天皇賞を勝ったキタサンブラックは、あの北島三郎氏。公式データの馬主名は「大野商事」と記されているが、これは北島三郎氏が代表を務める有限会社の名前だ。以前から、北島三郎氏が馬主であることは知られていた。初めて中央競馬会の馬主になったのは昭和38年(1963年)というから、馬主歴は長い。しかし、なかなかG1レースに勝つ馬には恵まれなかった。

第36回ジャパンカップ1着のキタサンブラック。バンザイする(左から)清水久詞調教師、オーナーで歌手の北島三郎、武豊騎手=11月27日、東京競馬場 (撮影・榎本雅弘)
第36回ジャパンカップ1着のキタサンブラック。バンザイする(左から)清水久詞調教師、オーナーで歌手の北島三郎、武豊騎手=11月27日、東京競馬場 (撮影・榎本雅弘)
 昨秋、キタサンブラックが菊花賞に勝って初めてG1を制覇。今年はそのキタサンブラックが春の天皇賞と11月のジャパンカップに優勝、馬主としての地位をグッと高める年となった。キタサンブラックは、有馬記念にも出走する。昨春の産経大阪杯からコンビを組み、5戦3勝を挙げている武豊とのコンビは有馬記念でも人気を集めるに違いない。

 話題といえば、野球界で一世を風靡した“大魔神”佐々木主浩氏も馬主としてすっかり「実力派」と認められている。何しろ、馬主になってわずか7年でG1を初制覇。すでにG1で3勝を記録している。今年はまた「快挙」も達成した。11月初旬のアルゼンチン共和国杯、持ち馬のシュヴァルグランが優勝したばかりでなく3位にも同じ大魔神の持ち馬ヴォルシェーブが入り、同レースで1着と3着を占める快挙。賞金は2頭合わせて7100万円だった。

 佐々木主浩氏がすごいのは、その「眼力」と言うべきだろう。今季の馬主ランキングを見ると、12月18日のレースを終えた時点で賞金額では28位にランクされている。賞金額4億8千914万円。日本プロ野球界の高額年俸選手とほぼ同レベルの収入を馬主として得ていることになる。

 1位のキャロットファームは30億円を越え、2位サンデーレーシングも約28億円だから、トップにはまだ差があるけれど、これらはいずれも会社として多くの馬を所有している。わずか6頭の馬で5億近い賞金を稼ぐのは容易ではない。ランキング表をよく見ると、実は“大魔神”が馬主の中でダントツの才能の持ち主ではないかと思えてくる。

 勝率は・257。出走すれば4回に1回以上も優勝する計算だ。今季は計35回のレースで9勝を挙げている。連対率は・343、複勝率は・486。つまり、大魔神の馬は2回に1回はほぼ必ず3位以内に入るから、複勝馬券を買っていれば確率5割で配当をもらえる。これらの数字が、かなり驚異的であることはランキング表全体を見渡せばすぐわかる。