落合道夫(東京近代史研究所代表)

 真珠湾を訪問した安倍首相は、オバマ大統領と日米の英霊の慰霊を行った。これについて日本国内には謝罪するのではないか、靖国参拝が先だなどという批判もあったが私は大変良いことだと思う。世論調査でも88%が支持している。それは内外の政治的に難しい状況で、日本の安全と発展に必要不可欠な日米関係に好影響を与えると思われるからだ。

 また、これとともに私が期待するのは、この慰霊行事が両国民の戦争の記憶に上塗りされて事件の生々しい印象が緩和されることと、歴史の見直しにより日本人が戦後の自虐的な日本悪者史観から解放されることである。このため早くも中共や韓国から否定的な反応があり、彼等もこの慰霊行事が日本人に自信を取りもどさせる機会になると考えていることがわかる。
真珠湾攻撃75年の追悼式典が開かれた米ホノルルで海上を通過する駆逐艦。左はアリゾナ記念館
真珠湾攻撃75年の追悼式典が開かれた米ホノルルで海上を通過する駆逐艦。左はアリゾナ記念館
 今回の慰霊行事の日本側の動機は、極東における日本の安全が脅かされてきたからである。日本は北から中朝露という3大核大国に包囲され尖閣では既に侵略が始まっている。自力で国防が出来ない日本は米国が撤退すればたちまち占領される。

 また、米国は国防だけでなく経済関係でも最重要な大市場であるから日米友好は不可欠だ。しかしその頼みの米国はトランプ新大統領が世界、極東、日本についてどのような方針を打ち出すのか分からない。

 このため日本は大変不安な状況にある。そこで今なお両国民の喉に刺さった骨のような真珠湾事件の慰霊を行い少しでも両国民の対立感情を緩和することを望んでいるのだろう。

 一方、米国にとっては緊迫する極東問題の対応には日本の協力が不可欠だ。そこで半世紀以上昔の歴史事件が今なお日米離間工作に利用されるのは望ましくないので、両国民の心情を考えて慰霊を行うことにしたのではないか。これは両国のきわめて高度な政治的判断であるから、真珠湾の慰霊をオバマ大統領の原爆慰霊のバーターと考える人がいるとしても結果が良ければ問題は無い。