関ヶ原の戦いを1分で片付けた「超高速関ヶ原」など、脚本家・三谷幸喜氏による驚きの演出で「大河ドラマの歴史を変えた」と評された『真田丸』がいよいよ最終回を迎える。そんな話題作の後を継ぐ2017年のNHK大河『おんな城主 直虎』のスタッフのプレッシャーは大きいだろうが、前評判は上々だ。

「戦国時代のドラマには珍しい女性武将・井伊直虎をクールな柴咲コウさんが演じるというのは興味深い。舞台設定が異色だけに、『真田丸』以上に斬新な展開を期待します」(テレビ誌記者)
NHK大河ドラマ「真田丸」主演の堺雅人さんから「おんな城主 直虎」主演の柴咲コウさんへのバトンタッチセレモニーが行われた。ドラマゆかりの地にちなみ堺さんからは「紀州・九度山特産の柿」、柴咲さんからは「浜松の凧」が送られた=2016年11月25日、東京・渋谷(桐山弘太撮影)
NHK大河ドラマ「真田丸」主演の堺雅人さんから「おんな城主 直虎」主演の柴咲コウさんへのバトンタッチセレモニーが行われた。ドラマゆかりの地にちなみ堺さんからは「紀州・九度山特産の柿」、柴咲さんからは「浜松の凧」が送られた=2016年11月25日、東京・渋谷(桐山弘太撮影)
 ところが、放送まで1か月を切ったこのタイミングでドラマの根幹を揺るがしかねない歴史資料の存在が取り沙汰されている。何と実在の直虎は「おんな城主」ではなく、「男」だったというのである。

「ドラマと史実が違うのは別に悪いことではないと思っているんです。だから、大河ドラマが間違っているなんて、野暮なことを言うつもりもありません。でも、ドラマはドラマ、史実は史実として分けて考える必要がある。だから僕は史料の存在を明らかにするのです」

 そう語るのは、井伊家ゆかりの美術品などを保存・展示する井伊美術館(京都)の井伊達夫・館長だ。井伊家末裔でもある達夫氏は、井伊家が当主を務めた彦根藩の記録を調査し、「直虎は、女ではなく男だった」との結論に至ったという。

 大河ドラマの主人公ながら、井伊直虎に関する史料は極めて少ない。そこでNHK公式サイトにある大河ドラマの「あらすじ」をもとに、これまで伝えられてきた直虎の人物像を紐解いてみると──。

 直虎は遠江(現在の静岡県西部)の北部にある井伊谷(現在の浜松市北区)の領主・井伊直盛の娘として生まれた。生年も幼名も不明とされている。

 出家して「次郎法師」を名乗るものの、相次ぐ戦争や謀略によって家督を継ぐ男たちが次々と命を落とす中、井伊家を守るために還俗(出家した者が俗人に戻ること)。「女城主」として直虎を名乗り、唯一生き残った井伊家の幼い男子を守りながら再興を目指す──というもの。

 ちなみに「直虎が育てた男子」とは、後に徳川家康に重用されて「徳川四天王」の一人に数えられた井伊直政。関ヶ原の戦いなどの戦功により彦根に領地を与えられ、彦根藩の初代藩主となった戦国武将だ(江戸時代末期の「安政の大獄」、「桜田門外の変」で知られる井伊直弼は彦根藩第15代藩主)。

 こう紹介すれば、江戸時代まで続く名門・井伊家の窮地を救った「女傑」の物語に俄然興味が湧いてくる。

 だが、この“壮大な歴史物語”を井伊家末裔が、「史実ではない」と否定したのだから驚くほかない。