安倍晋三首相は12月26、27日にハワイで日米首脳会談を行ない、オバマ大統領とともに現職の総理大臣として初めてアリゾナ記念館を訪れる。日本軍による真珠湾攻撃の犠牲者を追悼する施設だ。

「慰霊のために行く。日米和解の価値を発信したい」

12月下旬の真珠湾訪問を明らかにする安倍晋三首相=12月5日、首相官邸
12月下旬の真珠湾訪問を明らかにする安倍晋三首相
=12月5日、首相官邸
 安倍首相が緊急記者会見で真珠湾訪問を発表すると、日本の大メディアは左から右まで礼賛報道があふれた。〈首相の真珠湾訪問「よき前例に」〉(朝日)、〈米国民、温かく受け止め〉(毎日)、〈同盟の価値、トランプ氏に示す〉(産経)。

 米国側も同様だ。ワシントンポストは「画期的」と報じ、安倍首相の歴史認識を「極右」と批判していたニューヨーク・タイムズでさえ〈オバマ大統領の広島訪問との事実上の相互訪問になる〉と歓迎した。

「開戦75年目の日米和解」といわれれば反対する者はほとんどいないだろう。だが、本当に「広島訪問」と「真珠湾訪問」は“等価交換”していい問題なのか。

「アッキー訪米」の謎

 広島、長崎への原爆投下で10万人以上の一般市民が犠牲になった一方、真珠湾では軍事施設に限定した攻撃で、巻き込まれた非戦闘員の犠牲者は数十人とされている。元外務省国際情報局長の孫崎享氏が指摘する。

「本来、真珠湾攻撃と原爆投下は別次元の問題であり、同列に論じることなどできません。一部の米国メディアは今回の真珠湾訪問が、オバマ大統領の広島訪問に対する“実質的な返礼”であることを強調しています。

 これは、『原爆投下は真珠湾攻撃に対する当然の報復である』という米国側の論理を、相互訪問によって日本政府が認めたと内外にアピールしたいからでしょう」

 そうした見方があるからこそ、安倍政権はこれまで一貫して相互訪問を否定してきた。首相自身、広島でのオバマ大統領との共同記者会見(5月)でわざわざ「ハワイを訪問する計画はない」と言明してみせた。

「総理は政権末期のオバマ氏の広島訪問と自分の真珠湾訪問を同等の扱いにはできないと慎重に考えていた。今年8月に昭恵夫人が私的にアリゾナ記念館を訪問した背景にも、できれば夫人の真珠湾非公式訪問でオバマ氏の広島訪問との釣り合いをとろうという判断があった」(安倍側近議員)

 それがなぜ、今になって真珠湾訪問に舵を切ったのだろうか。孫崎氏はこう分析する。

「安倍首相はオバマ政権が末期になるタイミングで、外交の軸足を米国からロシアのプーチン大統領との領土交渉に移し、12月15日の日露首脳会談で北方領土返還に道筋をつける大成果をあげるつもりだった。

 ところが、領土交渉は難航している。返還が遠のいたと判断したから、真珠湾訪問による日米関係強化に急に舵を切った。日露交渉の行き詰まりを真珠湾訪問のパフォーマンスで埋め合わせようという狙いでしょう」

 この時期の“サプライズ発表”となった理由がよくわかる。

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