孫氏は常に、次世代において主役となる企業を先んじて取り込み、業界での地位を確保することによって、さらに大きな事業を得るという、一種の倍々ゲームでビジネスを進めてきた。今回の動きもその延長線上にある。
記者会見するソフトバンクの孫正義社長
記者会見するソフトバンクの孫正義社長
 ソフトバンクが最初に手を付けた会社はコムデックスなど米国の展示会運営企業であった。ただの展示会に1000億円も投じるなど狂気の沙汰と言われたが、著名展示会のオーナーとして米国IT業界へのフリーパスを手にした孫氏は、米ヤフーの発掘に成功。ヤフーが上場したことで巨額の含み益が転がり込み、これが後の買収戦略の原資となった。

 ARMの買収も同じである。同社はIoTの分野では主役となる企業のひとつであり、ARMのオーナーともなれば、IoT分野の巨人である米GE(ゼネラルエレクトリック)や独シーメンスといった企業も、孫氏を無視することはできないはずだ。

 今回、IT業界関係者としてはいち早くトランプ氏との関係を強化した孫氏のプレゼンスは今後、さらに高まる可能性が高い。しかも今回、孫氏はトランプ氏と対立している米アップルとの間を仲介するような動きも見せている。

 一連の動きがうまく結びつけば、ソフトバンクは、再びTモバイルUSの買収を実現し、さらにそれ以上の大きな買収案件を獲得できるかもしれない(ちなみにソフトバンクによる買収について反対してきた米連邦通信委員会のウィーラー委員長は1月15日に辞任する)。IT業界は変化が早く、誰も10年後を予測することはできない。

 10年後に重要な立ち位置にさえいれば、案件が自動的に転がり込んでくるという考え方は、計画性がないように見えて実は合理的なのだ。