孫氏のこうしたやり方に対しては、スタンドプレー型でリスクが大きいと指摘する声もある。確かに孫氏の戦略は大きなリスクと引き換えであり、財務的には常に綱渡りが続く。だが、孫氏は、話題になった企業に脈絡もなく食らい付いているわけではなく、緻密な情報収集を常に行っている。大胆不敵な買収はこうした行為の先に存在している。

 筆者はこの話を想像だけで書いているわけではない。筆者がまだ駆け出しの記者だった時代、ソフトバンクが取り扱う、ある小さな製品について同社に取材を申し込んだことがある。てっきり若手の社員が担当なのかと思いきや、広報担当者が言うには孫社長自身が担当者だという。孫氏は米国の展示会などを小まめに回り、面白い製品やサービスがあると、自分で交渉してその場で契約を結んでくるのだという。

 すでにソフトバンクは株式を上場(店頭公開)して、一連の巨額買収をスタートさせており、孫氏は多忙を極めていた。そのような中でも、こうした小さな案件にも孫氏は目を光らせ、自身の手でハンドリングしていた。

 おそらく孫氏にとっては、当時の小さな案件と3兆円の大型案件には大きな違いがないのかもしれない。自らの手でデューディリジェンス(投資などにおいて案件を吟味すること)を行い、自身の戦略に添って投資をするというポリシーは規模とは無関係だ。

 もっとも、この話は同社における後継者問題とトレードオフになる。社長含みで招聘した元グーグルのニケシュ・アローラ氏は、結果的に孫氏の後継者になることはできなかった。幸い孫氏は59歳と若く、あと10年は問題なく世界を飛び回れるだろう。その間に、どこまでコングロマリットを拡大し、集団経営体制を構築できるかがカギとなる。