小島伸之(上越教育大准教授)

 辺見マリが拝み屋に洗脳されて5億円を失った経験を赤裸々に語った『しくじり先生 俺みたいになるな!!』(テレビ朝日)2015年9月14日放送の内容は、「神回」として注目を集めた。同年にはアメリカでもドキュメンタリー映画『Going Clear: Scientology, Hollywood, and the Prison of Belief』が公開されトム・クルーズやジョン・トラボルタが信仰しているサイエントロジーとハリウッドとの関係を描き、全米に衝撃を与えた。
映画「ミッション:インポッシブル/ローグ・ネイション」のワールドプレミア会場に現れたトム・クルーズ(ロイター)
映画「ミッション:インポッシブル/ローグ・ネイション」のワールドプレミア会場に現れたトム・クルーズ(ロイター)
 これまでも芸能人と宗教の関係はしばしばメディアに取り上げられてきた。戦後日本において主として取り上げられてきた教団は、創価学会、真如苑、霊友会、統一教会(家庭連合)、幸福の科学、モルモン教などである。

 むろん芸能人の中には、伝統宗教の信仰を有する者もいると考えられるが、それらは社会的な関心がほぼ寄せられない。『新宗教事典』(弘文堂)は、マスコミが新宗教に関心を寄せる理由として、その社会的影響力の大きさと「事件性」の二つを挙げ、「マスコミが新宗教に抱く興味のあり方は、けっして宗教文化への関心といったような類のものではない。実態が不明瞭な集団に対する覗き趣味的な関心とでもいったものが主流を占める」と述べているが、芸能人と宗教の関係に寄せられる人々の関心には、確かにこうした傾向が認められる。

 一方、事件や社会的問題にかかわる出来事が生じ、それに宗教が関係する場合、メディアが関心を寄せることは自然なことである。教団の側が芸能人を「広告塔」として積極的に利用する場合もある。

 新宗教と有名人(広義の芸能人)との関係が戦後初めて取り上げられたのは、璽宇と元横綱の双葉山、名人棋士(囲碁)の呉清源の関係であるが、その契機は1946年に璽宇が東京の破滅予言をしたことによる。

 1991年には講談社『フライデー』に対する幸福の科学の大規模な抗議運動(フライデー事件)が生じ、同教団と作家の影山民夫、女優の小川知子の関係が取り上げられた。1992年には、統一教会の合同結婚式に、歌手の桜田淳子、元新体操選手の山崎浩子、元バドミントン選手の徳田敦子が参加したことが話題となった。

 オウム真理教の坂本堤弁護士一家「失踪」事件以降の疑惑報道においては、歌手の鹿島とも子が1994年に「芸能界引退・オウム出家」記者会見を開いたことが社会の注目を集めている。

 このような状況に際して、しばしば「なぜ芸能人が(新)宗教にハマるのか?」というテーマが語られるが、芸能人がそうでない人々と比べ(新)宗教にハマりやすい傾向があるということは学術的には裏付けられていない。

 一般的に、新宗教への入信の動機は、古くは「貧・病・争」(貧困・病気・人間関係のトラブル)のような剥奪状況で説明され、オイルショック期以降においてはそれに近代物質文明・合理主義に対する反発や「自分探し」のような説明も加わる。