東京・銀座のランドマークである、ソニービルは入り口の一角で、サッカーのワールドカップ(W杯)ブラジル大会のダイジェスト版を4Kテレビで流したり、最上階のホールでは大型画面を用意したり、ファンの熱気に包まれていた。日本が1次リーグでの敗退が決まると、すっかり人波は遠のいた。

 列島がサッカー熱に浮かされているとき、プロ野球交流戦は盛り上がりをみせ、巨人対ソフトバンクの最終戦で巨人の優勝が決まる劇的な幕切れとなった。

 プロ野球の1リーグ構想が突然明るみに出て、紆余(うよ)曲折を経て2リーグが継続してから10年目である。あの時の真相を探ろうとする報道が相次いでいる。「アベノミクス」の成長戦略の立案に対し、自民党が球団を現在の12球団から16球団にする構想を打ち上げた。

 改めて、プロ野球の「経済学」が論議されている。列島に球団の数を増やすことはできるのか、球団経営は親会社からの補填(ほてん)なくして自立できるのか…。

 千葉に本拠を置くロッテと、福岡のダイエーを合併して、1リーグにする構想は実は、10年前ではなく、その前年に水面下で開始されていた。

 オリックスの本拠地のネーミングライツ(命名権)を購入したソフトバンクの孫正義代表が、この年にオリックスに招待されて試合を観戦したのが、のちに2リーグを維持することになるきっかけだった。観戦直後にプロ野球の球団買収の意向を示した。

 買収できる球団はどこか。情報を収集する過程で1リーグ構想につきあたった。球界の情勢に詳しい2人の友人から情報がもたらされた。

 そして、球界再編騒動の2004年に入る。ロッテとダイエー、さらにオリックスと近鉄の合併構想までが明らかになり、選手会のスト表明にまで至る。

 ダイエー本体は10月、産業再生機構の支援を仰ぐ。孫代表はその瞬間に、球団が売り出されると読んだ。急遽(きゅうきょ)、休日に呼び出され、福岡と東京で買収に名乗りを上げる記者会見の設営を命じられた。

 ダイエーとの交渉を進めるなかで、突然のように西武から身売りの打診があったのに驚かされた。

 球団経営の収入は、チケットと関連グッズ、飲食である。支出のうちで大層を占めるのが実は球場の使用料なのである。米国では自治体が球場を建設して、年間の使用料を1ドルにしているところもある。ネーミングライツも補填する。仙台を本拠とする楽天が早期に黒字化したのは、県営球場の使用料が格安であることが大きな要因だ。

 福岡はかつて西鉄が、仙台は準フランチャイズだったロッテに去られた経験がある。市民は地元に球団が存在する意義をよく知っている。

 プロ野球球団を増やせるかどうか。その方程式を解く鍵は、多くの否定的な専門家が説くような、選手不足や親会社の維持費の問題ではないと思う。

(シンクタンク代表 田部康喜)
※フジサンケイビジネスアイ 2014年6月30日