碓井真史(新潟青陵大学大学院教授)


神社仏閣油まき事件


奈良・東大寺の金剛力士像の足元部分で発見された
油のような液体がかけられた跡=2015年4月10日
 事件の全貌は明らかにされていませんが、一人の男性に逮捕状が出されました。

 この男性は、社会的地位も高く、全国各地の教会や一部のキリスト教系大学などでも、多くの人を集めてメッセージを語っていたようです。また容疑が事実であれば、その犯罪行為は、教師が万引きで捕まったような出来心の犯罪ではなく、彼が人々に伝えていた主義主張そのものから出たものです。中高生がいたずら半分に神社仏閣を汚すのとは、意味が違うでしょう。

 朝日新聞は、6月2日の朝刊で次のように報道しています。

 千葉県の神社に液体をかけた疑いで逮捕状が出た男(52)が、自ら創立した宗教団体内で「神社仏閣には悪い霊がいて、日本人の心を縛っている。油でこれを清める」と話していたことが、関係者への取材でわかった。~

 米国在住の日本人医師で、キリスト教系を標榜(ひょうぼう)する宗教団体を立ち上げている。~男は偶像崇拝を否定。「神社仏閣には悪い霊がいる。油でこれを清め、日本人の心を解放する」という趣旨の説明をしていたという。

 朝日新聞同日の大阪版には、次のような情報も追加されています。

 関係者によると、男は油をかける場所について「朝、聖霊さまが教えてくれる」と説明。誰にも事前に伝えず、かけた後に神社仏閣など一部の場所を信者らに明かしていたという。

 このようなマスコミの報道から、彼のことを新興カルト宗教の教祖といった誤解をしている人もいるようです。そこで、前の記事でこの事件について解説をしました(「聖霊さま」などの用語解説も)。

 ただ、やはりわかりにくい部分があり、彼は「カルト教祖の異常者だ」といったご意見もいただきました。


カルト宗教とは・新興宗教とは


 新興宗教とは、新しく起きた宗教という意味で、本来価値判断を含まない表現です。ただし、「新興宗教」というと何か怪しげなニュアンスを感じる人はいるでしょう。

 カルト宗教とは、多くの人とは異なる変わった内容を信じる少数派による宗教という意味です。「カルト的人気を誇る映画」といった表現で使われる「カルト」です。一般受けはしないけれども、少数の人には熱狂的支持を得ます。

 私たちには、信教の自由があります。どれほど奇妙に思える信仰でも、信じる自由があります。他の法律を犯したり、人々に危害を加えないのであれば、UFOを信仰しても、パワースポットを信仰しても自由です。だから、「カルト宗教」は本来は悪い意味ではありません。

 しかし一般的に「カルト宗教」というと、悪い意味で使われるでしょう。奇妙な教えで人をだましたり、信者からお金や人生を奪い取る悪徳宗教といった意味でカルト宗教と言われます。

 マインドコントロールなどの研究をしている心理学者や被害者保護活動をしている弁護士らは、ただの珍しい信仰団体とは区別するために、「破壊的カルト宗教」と表現することもあります。信者や社会全体を破壊するのが、破壊的カルト宗教です。