ネット通販で増える荷量を誰が捌くか。宅配便ネットワークが構築されていない国々は、日本以上にこの問題に悩まされている。米国では、あのジェブ・ベゾスが生鮮通販「アマゾンフレッシュ」で自社配送の構築を目論んでいる。
 2007年にひっそりとシアトル市内の2地域で始まったアマゾンフレッシュ。米アマゾンが手掛ける生鮮食料品のネット通販サービスだが、7年経った14年6月時点でも、ロサンゼルスとサンフランシスコに地域を拡大しただけに留まる。しかし、このスローペースには理由がある。
 アマゾンフレッシュの10年前、サンフランシスコでウェブヴァンという食料品ショッピングサイトが生まれた。18カ月で9つの都市圏にまで拡大したが、01年に突然倒産してしまう。ウェブヴァンの元幹部が挙げる重要な倒産要因のひとつに「物流」がある。
 ウェブヴァンは都市における細かな地域ごとの分析をせず、幅広い地域でサービスを実施したため、配達トラックの運行スケジュールを効率的に組めなかったと言われている。人口密度の低い地域も同時期にサービス開始したことで、1回のトラック出動で配達する件数を稼ぐことが困難だった。

 REUTERS/AFLO
米国アリゾナ州にあるアマゾンの物流センター。
図書館の書庫のように、書籍がひしめく
 (REUTERS/AFLO)
  REUTERS/AFLO
アマゾンフレッシュの日本上陸はあるか
(REUTERS/AFLO)




 現在、三都市圏で営業しているアマゾンフレッシュだが、需要が多い地域に限っている(年会費は299ドル、即日配達は別にプレミアム料金70ドルが必要)。アマゾンはウェブヴァンの轍を踏まないようにしているのだろう。
 アマゾンにはウェブヴァンの元幹部ミック・マウンツがいる。ウェブヴァンが苦戦した倉庫運営の効率化のために、マウンツが起業したロボットメーカー「キヴァシステム」を12年に7億750万ドルで買収したからだ。
 

自社配送を目論むベゾス

 アマゾンのジェフ・ベゾスCEOは「我々アマゾンにあってウェブヴァンになかったもの、それは既存の膨大な顧客ベースだ。我々の顧客は本や家電と一緒に食料品もネットショッピングしてくれるはずだ」と、アマゾンフレッシュの事業化に自信を見せる。 アマゾンが所有する巨大倉庫から消費者宅まで食料品を運ぶのは、アマゾンが独自で運営している緑色のトラックだ。これまでアマゾンは、運送大手の米フェデックスや米UPSを下請けで利用していた。しかし、アマゾンフレッシュを手始めに自社配送ネットワークを構築しようとベゾスは目論む。

アマゾンにとって年々増加する配達費用は頭の痛い問題である。2011年には40億ドル、2012年には51億ドルに跳ね上がったこれらの費用を抑えるだけでなく、食料品以外の商品も同じトラックのラインに乗せることで、効率化も推進したい狙いだ。
 生鮮食料品のオンラインビジネスは、在庫管理や新鮮なまま配達を完了させなければならないなど多くの点でリスクが大きい。しかし、ベゾスはどうやら、繊細な商品を取り扱うアマゾンフレッシュをあえて、自社配送の試験台に使う目的のようだ。将来的に自前のロジスティックス網を持つことで、「時間通りに商品を配達する」という部分まで完全にコントロール権を掌握しようとしているのだ。

 しかし、フェデックスやUPSからの完全な離脱は困難というのが大方の見方だ。ノウハウの構築、及びアマゾン全体の物流をこなすだけの人材の確保は一朝一夕にはできないからだ。ベゾスは、「フェデックスもUPSも、アマゾンの成長に見合った投資を行っていない。だから自分でやる」とあくまで意気軒昂だが、30から40の都市圏へのサービス拡大は噂だけが飛び交い、具体的な計画は伝わってこない。

リアルスーパーの対抗策

 全米最大のスーパーマーケットであるウォルマートが、アマゾンフレッシュに対抗して打ちだしたサービスが「ウォルマート・トゥ・ゴー(持ち帰りできるウォルマートの意味)」だ。
 これは近隣店舗からの配送サービスのことで、一部地域では生鮮食料品の当日配送も始めている。消費者は店舗でのピックアップ(受取)も選択することができる。
 ウォルマートが独自に行った調査によれば、回答者のうち55%が配達されるよりも自分で受け取りに行く方がいいと答えた。現時点では実店舗を訪れることを厭わない消費者の方が多いとウォルマートは結論付け、配送よりピックアップに力を入れる。14年3月には、アーカンソー州の本部近くで同じ「ウォルマート・トゥ・ゴー」と冠したコンビニ業態をテスト展開し、ピックアップ拠点の多様化を図っている。
 となると、世界一のコンビニ企業、セブンイレブンの動きが気になるところだ。日本全国に17000店舗という膨大な拠点を既に有している。
 同社に加え、イトーヨーカドー、そごう・西武など様々な業態を持つセブン&アイは、鈴木敏文会長の大号令のもと、ネットと実店舗を融合させるオムニチャネルの取り組みを模索中だ。完成すれば、ネットで注文したヨーカドーの食料品と西武の高級品をまとめてセブンイレブンで受け取ったり、自宅に送ったりできるようになる。 イトーヨーカドーのネットスーパーは「売上450億円、営業利益率4.3%に達し、拡大が見込まれる。店舗内のピックアップ、梱包作業の増員、効率化で出荷能力を上げる」(高橋信オムニチャネル推進室総括マネージャー)。配送は地場の運送業者に委託しているが、セブンイレブンにはコンビニ店員が消費者宅に弁当や総菜を届けるサービス「セブンミール」がある。「コンビニからの生鮮の配送も検討はしている」(広報部)という。
 神奈川県の橋本地区では、ヨーカドーの商品をセブンイレブンで受け取る試験サービスが7月に始まった。セブン&アイが世界最大のコンビニ網をどう活用するか注目が集まっている。