森口将之(モータージャーナリスト)

 高齢ドライバーによる事故があとを絶たない現状は、あと10年もすれば高齢者(世界保健機関(WHO)では65歳以上を高齢者と規定している)の仲間入りをする筆者にとっては切実な問題でもあり、理解できる部分もあるテーマである。

 自分はモータージャーナリストでもあるので、クルマの運転は日常生活と切っても切り離せない存在となっているが、クルマより前に免許を取ったモーターサイクルについては、約10年間乗らない時期があった。「このままでは一生乗れなくなるかもしれない」と思い、いわゆるリターンライダーになったのは40歳の頃。久しぶりに乗って、反射神経が鈍っていることに愕然とした経験がある。

 でも逆にクルマのほうは、毎日のようにステアリングを握っているので変化に気付きにくい。日常的に運転する人ほど、危険を察知しにくいと言える。

 ベテランドライバーの中には、家族など周囲の人間が運転を止めるように促しても、頑として拒むシーンが多いという。当然だろう。今年75歳の高齢者が20歳だったのは1962年。60年代と言えば、我が国でも高速道路が開通し、日本グランプリレースが始まり、「トヨタ2000GT」や「ホンダ・スポーツ」などのスポーツカーが次々に登場した時期だ。
「トヨタ2000GT」=昭和42年11月
「トヨタ2000GT」=昭和42年11月
 クルマは多くの人にとって憧れであり、この時代に青春時代を送った人たちは、クルマに対する思いが特に強いのではないか。ゆえになかなか運転を止めるという決心ができないのだろう。

 心身の衰えには個人差があるので、単純に年齢で区切ることについては賛成しかねる。今年3月に施行される改正道路交通法では、逆走や信号無視などの交通違反をした75歳以上のドライバーに臨時の認知機能検査を課すなどの内容になっているが、75歳未満でも危険な状況は起こるはずである。