奈良林直(北海道大学大学院特任教授)

 小泉元首相が、高レベル廃棄物の埋設処分を行うフィンランドのオンカロに行ってから、自分のシンクタンクへの寄付を断られた腹いせとのうわさがあるが、「こんなもの出来っこない」とばかりに高レベル廃棄物の処理を困難視して、いきなり脱原発を唱えだしている。しかし、素人の考え休むに似たりである。

 小泉元首相の知識の想定外と言えるほど、我が国も世界の技術も、ずいぶん進んでいる。原発の議論をすると、必ず放射性廃棄物の問題を持ち出してくるが、フィンランドやスウェーデンなどはかなり着実に技術開発を進めて、国民への理解も進んでいる。原発は「トイレなきマンション」だとか、「廃棄物を地下深くに埋設し、10万年もの間、保管しなければならない。これは子孫に対する冒涜だ」と批判されているが、まず、このあたりの誤解をわかり易く解説する。この点を明確に説明し、これが技術的に解決できると示すことが、原発に対する理解を得るためにも必要と思う。

 使用済核燃料の処理法は、4つある。まず、①キャスクという容器に使用済み燃料を入れて、そのまま保管する方法と、②再処理してプルトニウムとウランを分離し、メルターという装置で電気を流してガラスを溶かし、高レベル廃棄物を均一に混ぜて、キャニスターというステンレス製容器に流し込んで固化体するもの、そして、③高速炉で毒性の高いアメリシウムなどを消滅させてから、ガラス固化体にする方法がある。保管期間でいうと①が10万年、②が2万年、③が300年となる。政府が「もんじゅ」を廃炉にすると言っているが、これは世論迎合もいいとこで、まったくの誤りだ。
高速増殖原型炉もんじゅ=福井県敦賀市
高速増殖原型炉もんじゅ=福井県敦賀市
 「もんじゅ」の役割は人類2500年のエネルギーを供給可能とする技術開発と、高レベル廃棄物の削減と保管期間の大幅短縮になる技術の2つがあり、まさに一石二鳥の優れた技術で、既に技術的には十分実用化可能な範囲にある。④は、加速器の中性子ビームで、高レベル廃棄物を無害化するもので、現代の科学技術を持ってすれば、原理的に可能であるが、ビームを発生する装置とその運転コストを考えると、捨てるゴミに大金をつぎ込むことになり、経済性が全くない。

 中性子ビームで無害化するには、核融合炉が実用化する100年後くらいまで待っていればよい。核融合炉のブランケット(毛布)として、外周に並べておいて核融合反応で漏れてくる中性子を使えばよいのだ。いずれ人類の知恵が解決する。