なぜ、我が国の使用済燃料の再処理技術の開発に時間がかかったかについて説明する。原子炉の中で燃料が燃えていく間に白金族というプラチナの親戚みたいなものがたくさんできる。それらは不溶解残渣(ざんさ)としてメルターの下の方に沈殿してたまってしまう。メルターは電気を流してガラスを溶かす(メルトさせる)装置である。ここに電気を通すと白金などの金属のほうに電気が流れてしまって、ガラスが均一に溶けない。このことが安定的な運転ができなかった最大の理由である。

 フランスの再処理施設についていた不溶解残渣を取り除く沈殿槽を省略してしまったことがつまずきのもとで、気付いた時点で追加すべきであったが、国も地元自治体も「計画通り」の開発を要求したため、産みの苦しみとなってしまった。フランスの場合には、沈殿槽を使って白金を沈殿させ、残りの部分をガラスと混ぜる。ところが、日本ではコストダウンのため、この沈殿槽を省略してしまった。原子力研究開発機構の東海村の小型の研究施設では上手く行っていたのだが、大型化すると不均一になりやすいにもかかわらず、不溶解残渣と高レベル廃棄物の溶液を分離しないで、いっしょに投入するといういささか乱暴な処理装置にしてしまったのだ。

 沈殿槽を省略した形で計画書を出し国の認可を得ているので、後になって、やはり沈殿槽を設けたほうがよいとわかって、「日本原燃が沈殿槽を設置させてください」と言っても、地元も国も認めない。オリジナルの「計画どおりにやれ」というわけで、ずっと苦労しながら、試行錯誤を繰り返し、沈殿槽なしで白金も一緒に混ぜながら処理する技術の開発に何年もかかってしまったのである。

 次に、ガラス固化体がなぜ良いかについて説明する。鉛ガラスという放射線の遮蔽能力の高いガラスがあるが、これは金属の鉛を高温のガラスに均一に混ぜてできたやや黄色の透明なガラスである。鉛が均一に溶け込んで透明になったガラスなので、放射線の遮蔽能力が高く、放射能が非常に高い施設の窓ガラスに使われている。この鉛ガラスの鉛の代わりに、高レベル廃棄物や不溶解残渣をガラスに溶かし込んで「キャニスター」と呼ばれるステンレスの容器のなかに流入させる。透明なガラスがステンレス容器のなかで固まり、極めて安定した「ガラス固化体」ができる。

 フィンランドやスウェーデンでは、使用済み燃料をそのままステンレスや銅のキャスクと呼ばれる容器などに密閉して、地下300m以下の深地層に保管するが、使用済み燃料の被覆管などの腐食が進むと、キャスク内に放射性物質が漏れだし、キャスクも次第に腐食していくので、途中で掘り返せるようにとの要求もついてしまった。ウランの鉱脈レベルにもどるまで10万年かかるので、その間の保管に一抹の懸念があるという主張だ。