高レベル放射性廃棄物の地層処分の安全性の観点からは、放射線が非常に強い期間は直接人間環境にむき出しにならないこと、埋設後、格納容器が劣化しても、放射性物質が地下水で運ばれて人間環境に大量に放出されないことが求められる。したがって地質環境が安定で、地下水の動きが盛んでない場所が処分地としては適している。

 日本は、複数の大陸プレートと海洋プレートがぶつかり合うという、世界でも稀な場所に国土が位置するため、地震や活火山の数が世界の1割を占める地震大国、火山大国である。土地の隆起や浸食が大きい地域もあり、原発利用大国の中で、地質環境の安定性の条件は非常に劣る。降水が多いことから地下水も豊富で、プレートが押し合う力のため地下深くの岩盤にも地下水の水みちとなる亀裂が多く、この点でも有利な条件にはない。処分地が決まっているフィンランドやスウェーデンがバルト楯状地と呼ばれる安定な地質環境にあるのとは対照的である。

 地震の発生や火山の噴火には一定のメカニズムがあり、同じ場所で繰り返し起こりやすい。そのため、処分場に大きな影響を与えるような過去の活動の記録があれば、絶対に処分地に選ぶべきでない場所として除外できる。たとえば地震については、震源で生じた断層が地表にまで届き、今後も繰り返し活動する可能性が高いと判断されて「活断層」と認定された付近は、処分地に選定しないことになっている。

「活断層を避ければ大丈夫」は通用しなくなった


熊本県益城町内で地表に出現した断層。16日未明にM7・3の
地震を起こしたとみられる=2016年4月
熊本県益城町内で地表に出現した断層。4月16日未明に
M7・3の地震を起こしたとみられる=2016年4月
 しかし、現に活断層として知られていなかった場所で大きな地震が起きているように、マグニチュード7弱程度の規模の地震では、過去に起きたときには断層が地表まで達していなくても、将来、処分場の深さまで断層が届くように地震が起きる可能性はある。すなわち、処分地に選ぶべきでない場所は過去の記録だけからはわからないし、現時点で認定されている活断層を避けても、処分場が断層直撃を免れるとは言い切れない。

 日本では、2000年に高レベル放射性廃棄物を地層処分することを法律で定めた頃から、一般向けに地層処分が広報されるようになり、「わかっている活断層さえ避ければ大丈夫」といった言い方で安全性が強調されてきたが、これこそが福島第一原発事故に至った道である。安全性の確保にベストを尽くす取り組み方をしているという信頼を得るには、不確実な部分があることをきちんと伝えるべきである。

 高レベル放射性廃棄物は厚い金属容器に格納して埋設され、周囲には粘土の緩衝材を配置する。これらの人工物(地層処分関係者は「人工バリア」と呼ぶ)は、高レベル放射性廃棄物が埋設後1000年程度の早期に地下水と接触し、放射性物質が漏れることを防ぐ。地質環境の面で有利な条件にない日本では、人工バリアに期待する役割も大きい。

 人工バリアはいずれ劣化するが、地下で放射性物質が漏れてもすぐに地表付近に到達するわけではない。これは放射性物質の中には地下水に溶けにくいものもあり、また地下深くの地下水の流れが遅く、さらに地下水中の放射性物質が岩盤にくっついて移動が遅くなるなど、地層処分関係者が「天然バリア」と呼ぶ地下深くの地質環境の働きによる。しかし、高レベル放射性廃棄物の中には、セシウムやヨウ素など地下水に溶けて移動しやすい放射性物質ものもあり、こうしたものが安全性の上で問題となる。また仮に現時点で理想に近い処分地を選べたとしても、将来、地震などによる地質環境の変化によって、天然バリアの適性が低下する恐れもある。