地層処分に必要な費用は、福島第一原発事故以前の稼働ペースで、日本の50年程度の原子力発電で生じる約4万本のガラス固化体について約3兆円、それらの再処理によって発生するTRU廃棄物のうち地層処分するものについて約8000億円と見積もられている。筆者はNUMO発足当初の頃に、NUMOの技術部門のしかるべき立場にある人物が、きちんとした処分をやるには費用が足りないと主張されていたことが強く記憶に残っている。

 処分費用は、発電時に発電量に応じて電力会社から徴収される。当初計画のスケジュールどおりなら、埋設が始まるよりも早く徴収が終わってしまうので、事業を進めながら積立金を運用益で増やしていく前提で徴収額が決められている。当初は複利2%を想定し、20年間で総費用の約半分の額を徴収すれば、その後、何十年もの操業期間を終え、処分場を閉鎖した後、300年程度の簡単なモニタリングまで運用益で賄うという計算になっていた。現在では運用益は低下しており、それに応じて徴収額も改定されてはいるが、徴収終了後、運用益がますます低下し、事業が進むにつれ大幅に費用が足りなくなり、安全性が削られることが強く懸念される。

他の方法は本当にないのか


 地層処分はうまくいけば、人間の生活環境からある程度遠いところに高レベル放射性廃棄物を隔離できるという面はあるが、地下で何が起きているのかわからないという不安が常につきまとう。遠い将来の人々が、足元に高レベル放射性廃棄物が埋まっていることを知っていたほうがいいのか、知らないほうがいいのかも、関係者の中でさえ意見が分かれる。

 地層処分に頼らないで済ますために、科学の力で放射性廃棄物を放射能がない物質に変えられないかと考えたくなるが、そうした研究は何十年も続けられているにもかかわらず、現実的なものにはなっていない。これは、高レベル放射性廃棄物には様々な種類の放射性物質が含まれていて、これらすべてを共通の方法で効率良く放射能がない物質に変えることが難しいためである。仮に可能になったとしても、発生するそばから次から次へと放射能がない物質に変えることは難しいし、高レベル放射性廃棄物のうち一部の物質にしか適用できず、大半は地層処分される。この他の方法として、宇宙への廃棄は、それ自体の良し悪し以前に、頻繁にロケットを打ち上げなければならず、事故のリスクが非常に大きく、途方もなく費用がかかる。他国に埋設をして原子力発電を続けるというのはもっての外であろう。

 これに関連して、2016年12月に政府が廃炉の方針を決定した高速増殖炉もんじゅや、引き続き計画されることとなった新たな高速炉の役割として、近年では、プルトニウム増殖よりも高レベル放射性廃棄物の低減が前面に出されているが、これはかなりの誇大広告である。高速炉にできることは、高レベル放射性廃棄物のうちマイナーアクチノイド(原発でウランが中性子によって核分裂せずに、中性子を吸収して生じる)と呼ばれるごく一部の特殊な放射性物質を、高速の中性子によってウランやプルトニウムのように核分裂させることである。