福田ますみ(ノンフィクション作家)

 学校現場で、最近また新手のいじめが現れたらしい。その名も「原発避難いじめ」。福島第一原発事故で福島県から横浜市に自主避難した中学1年の男子生徒(13)が、「ばい菌」呼ばわりされて不登校になったという。

 複数の新聞報道によれば、男子生徒は小学2年の時に転向した直後から、名前に「菌」を付けて呼ばれたり蹴られるなど、複数の児童からいじめを受け始めた。小学5年の14年5月頃には、「(原発事故の)賠償金をもらっているだろう」と言われ、同級生の遊興費や飲食代など約150万円を負担していた。自宅に保管していた生活費がなくなっていることに気付いた両親が県警に相談。県警が調査したところ、この事実が発覚したという。

 県警は事件化を見送ったが、同年10月、保護者に調査結果を報告し、11月には学校にも伝えた。だが学校側はいじめ防止対策推進法に基づく「重大事態」と認定しなかった。保護者は市教委にも対応を求めたが、市教委からは、「指導はできるが介入はできない」と突っぱねられた。
横浜市の震災避難生徒いじめ問題の意見交換会に出席した林文子市長=12月8日、横浜市役所
横浜市の震災避難生徒いじめ問題の意見交換会に出席した林文子市長=12月8日、横浜市役所
 この報道にネットの住人は非難一色となった。ばい菌呼ばわりされていたということよりも、150万円という数字に敏感に反応したようである。こんな書き込みが殺到した。

 「おいおい、完全な恐喝事件だろうが…!」「150万円をカツアゲされてても学校が見て見ぬフリをする。日本すごい」「『いじめ』どころじゃなくて犯罪じゃねえか!」「加害者のガキと親の顔がみたい!!クズガキどもが!!」ネットの住人たちの怒りはわからないでもない。確かにこの150万円もの金額の授受が事実なら「いじめ」というより、恐喝に近い。

 しかし、先にも書いた通り、警察は動かなかった。こうした問題に詳しい弁護士によると、「あくまで一般論だが、150万円を巻き上げられたのが事実なら、恐喝罪、少なくとも強要罪に該当する可能性が高いので捜査をしてしかるべきだ」と疑問を呈す。(ただし、14歳未満の少年に対しては少年法により刑罰を科さないため、検察に書類送検後、家庭裁判所へ送致される)。

 さらに、問題を調査した横浜市教育委員会の第三者委員会は報告書で、学校側について「原発事故からの避難で内面的な問題を抱えた生徒への配慮に欠け、積極的に対応する姿勢がうかがえない」と指摘。「教育の放棄に等しい」と厳しく批判しているものの、肝心の金銭の授受そのものは、いじめと認定しなかった。ただ、「いじめから逃れるためだったと推察できる」とあいまいな記述にとどまった。