横浜市教育委員会には、市教委や学校を非難する意見が400件以上寄せられているという。だが、公表された情報だけではどうも腑に落ちないところがある。

 現在どの学校でも、いじめ問題に非常に熱心に取り組んでいる。そんな状況下、転校生、それも福島からの避難児童がやってきたのだから、教師ならだれでも、そうした児童がいじめのターゲットになりうるリスクを十分予測できるはずだ。加えて、150万円の金銭授受の事実が警察から通報されている。これで学校や市教委が迅速に動かない方が不思議だが、現実に対応は非常に鈍かった。

 学校は、「児童が進んで金銭を負担していたと認識していた」「学校の調査では8万円しか確認できなかった」などと説明をしているらしいが、それがまた、見苦しい言い訳として世間の顰蹙を買っている。

 しかし、警察が動かず、第三者委員会の報告書でも金銭の授受はいじめと認定されなかったところを見ると、世間で非難されるほど、学校の対応が悪かったとも思えない。私は、いじめの事実そのものを疑っているのではない。この男児が、不登校になるほど一人で長く苦しんだことは同情を禁じ得ない。公表された男児の手記も心を打つものだった。
横浜市教委の再発防止検討委員会の第1回会合であいさつをする小林力教育次長=12月15日
横浜市教委の再発防止検討委員会の第1回会合であいさつをする小林力教育次長=12月15日
 だが、どうも釈然としない。学校側の取り組みが遅れたのには、公にはできない理由があるのではないか。下種の勘繰りだと言われそうだが、テレビのニュースや新聞記事程度の情報量で、すべてを知った気になるのはとても危険だ。事実というのは、私たちが考えているよりずっと複雑で一筋縄ではいかないものだ。

 案の定というか、当時、対応していた教諭の一人が東京新聞の取材に答えてこう言っている。

 「複雑な事情があり、いじめとは考えなかった。言いたいことはあるが、取材には市教委が回答することになっており、詳しく話せない」。奥歯にものの挟まったような言葉だが、やはりウラに何かあるように思える。

 私が勘ぐるのにはわけがある。巷間まことしやかに伝えられていた事件を追った結果、真実は正反対で、文字通り、“物事にはウラがあった”ケースに遭遇しているからだ。

 少し詳しく書く。

 2003年「週刊文春」によって、「史上最悪の殺人教師」と実名入りで糾弾された人物がいる。福岡市の小学校で同年5月、担任を受け持った当時9歳の男児に対し、人種差別による体罰やいじめ、自殺強要を繰り返してPTSD(心的外傷後ストレス障害)を発症させたとして、この教諭はマスコミからすさまじいバッシングを浴びた。