なぜ韓国人は「慰安婦像」をむやみに設置したがるのか

『山岡鉄秀』

読了まで15分

山岡鉄秀(AJCN代表)

 日韓合意直後の2016年2月7日、私は「未来に禍根を残すな! 慰安婦日韓合意国民大集会」(頑張れ日本! 全国行動委員会主催)で登壇し、下記のようにスピーチした。1年前のことだ。

 現時点で政府の見解は、「今は韓国政府のご苦労を見守るのが正しい姿勢」とのことですが、我々AJCNの見解は異なります。様子見期間は終了しました。ここからは、明確なゴールを設定して、そこへ向けて誘導すべきです。さて、韓国は今、何を考えているでしょうか。我々の経験を踏まえれば、次のように考えていていることが推察できます。

・民間の反日活動を放置し、日本が如何に酷い国かを世界にアピール
・無条件で10億円を払うのが当然だという国際世論を醸成
・マスコミ誘導、ロビーイング強化
・大使館前の慰安婦像は民間が設置したので政府には何もできないのに、日本政府は撤去が10億円拠出の条件であるかのような理不尽なことを言うので活動家の説得に失敗したと主張
・日本政府が10億円払えばしめたもので、韓国側の約束は履行せず、民間の反日活動を放置して合意を骨抜きにする。ユネスコにも民間主導で申請
・これまで通り、裏から民間の反日活動を支援

 周知の通り、結果は我々の予想通りだ。釜山の日本総領事館前に新たに建てられた慰安婦像に多くの国民が心底怒っているが、いかにも韓国人がやりそうなことだ。我々は一介の市民団体に過ぎないが、多民族国家の豪州で生の韓国人と隣り合わせに生活しているから、赤裸々な現実を見据えて活動している。夢見るお花畑ではない。
韓国・釜山の日本総領事館近くの公園で慰安婦像の撤去に抗議する人たち=2016年12月28日(共同)
 「さっさと10億円を払って、道徳的に優位に立つ外交をすればよい」と主張した人々がいたが、道徳心がない相手にどうやって道徳的に優位に立つと言うのか。日本人の価値観や規範を前提に外交ができるとでも思っているのか。

 10億円もらったら「これでもう何をやっても構わない」と考え、「何度も日本人を騙す我々は戦略性に優れている」と誇りに思うのが韓国人だ。騙される方が悪い、嘘をつくのが当たり前の社会だから、ヘルコリアなのだ。

 今回はウイーン条約違反に言及したが、なぜ最初から言及して、ソウルの日本大使館前の慰安婦像撤去を条件にしなかったのか。「民間がやったことだから致し方ない」と韓国政府を擁護したうえ、10億円払って朴大統領を応援しようと宣(のたま)った元駐韓全権大使がいた。10億円もらったら「努力すると言っただけで、撤去するとは約束していない」と言って逃げるに決まっているではないか。良心の呵責を感じるとでも思ったのなら驚嘆すべきナイーブさだ。慰安婦像設置阻止も撤去もできなかったのも無理はない。

 それでも、世界から見たら、金をもらってから新たに慰安婦像を建てさせるのは明らかに韓国政府の不誠実に映るから、日本政府は10億円のはした金でまんまと韓国を追いつめた、ボールは相手のコートにある、と主張する方々もいる。
亡国プロパガンダを歴史的事実にした日本政府

 何度でも言うが、日本は2015年12月28日、日韓合意の発表と同時に歴史的大敗北を喫しているのだ。
2016年12月30日、ソウルの日本大使館前の慰安婦像(右)付近で、イベントに参加する学生ら(共同)
「慰安婦問題は、当時の軍の関与の下に、多数の女性の名誉と尊厳を深く傷つけた問題であり、かかる観点から、日本政府は責任を痛感している。安倍内閣総理大臣は、日本国の内閣総理大臣として改めて、慰安婦として数多の苦痛を経験され、心身にわたり癒しがたい傷を負われた全ての方々に対し、心からおわびと反省の気持ちを表明する」

 この英訳がまた酷いことは、ジャーナリストの有本香氏と対談した動画を参照いただきたいが、日韓合意とは「慰安婦20万人強制連行と性奴隷化」という朝日新聞と吉田清治のペアが世界中にまき散らした亡国プロパガンダを、日本政府が自ら歴史的事実として確証した、まさに歴史的瞬間だったのだ。この大失態の前には河野談話も吹き飛んでしまう。

 私は昨年、ABC(豪州国営放送)、BBC、ロイターといった国際メディアからインタビューを受けた。どのメディアも我々の主張をかなり引用していた。それはこちらが英語で相手が理解しやすいロジックを発信しているからだが、残念ながら、全ての報道は「性奴隷20万人は日本政府が公式に認め、謝罪し、賠償金を払った歴史的事実」として伝えた。あのような声明を出したらそう解釈されるのは当たり前だ。その自明の理が理解できないのは日本政府だけだ。もし、外務省幹部がわざとやったのなら、安倍首相はまんまと罠にはめられたことになる。

 日韓合意を米政府が高く評価したから、少なくとも政治外交的には成功だったと評価する方々もいるが、それは対米追従の悲哀を自ら肯定しているだけだ。米国の圧力で実現した日韓合意のシナリオは、もちろん米国人が書いている。米大統領補佐官(国家安全保障問題担当)のスーザン・ライスが主導したと聞いている。

 米国人は、日本の慰安婦制度は性奴隷制度だったと信じているから、その前提でシナリオを書き、それを日本政府が素直に飲んでくれたら上機嫌なのは当たり前だ。日本の名誉がどんなに損なわれても、米国政府は痛くもかゆくもない。日本が真の独立国ならば、まずは米国政府と膝を詰めて議論して双方が納得いくシナリオを練らなくてはならない。ただ与えられたものを咥え、頭を撫でられても、それは政治外交的勝利とは程遠い。

 すでに元慰安婦のお婆さんたちの過半数がお金を受け取ったから、挺対協(韓国挺身隊問題対策協議会)の力が衰え、反日が収束に向かうと考えたら大間違いだ。韓国の異常な反日洗脳教育はエスカレートするばかりだからだ。
韓国内外で激しさを増す異様な反日教育

 2013年にソウル市内の公園で発生した、「日韓併合は悪くなかった」と言った95歳の老人を38歳の男が老人の杖を奪って撲殺するという凄惨な事件を覚えておられる方もいるだろう。この男に下った判決はたったの懲役5年だが、韓国では重刑と捉えられ、ネットには男を英雄と賞賛するコメントが溢れている。

 年を経るごとに、この異様な反日教育は韓国内外で激しさを増し、今や韓国内外で挺対協の先兵となって慰安婦像設置など反日活動を率先しているのは学生らの若い世代だ。彼らは日韓併合時代はおろか、朴正煕の時代さえ知らない、純粋な洗脳世代だ。
韓国南部の釜山市中心部にある日本総領事館前に座り、1人でデモをする女性=2016年1月(聯合=共同)
 そして私が特に強調したいのは、幼い子供たちほど、特定の民族に憎悪を煽る教育に感化されやすく、純粋な正義感から攻撃的な行動に駆られやすい、ということだ。北米では韓国人子女が、「日本人は悪辣な民族だ、韓国人を殺して苦しめた」と叫んで日本人子女に唾を吐きかけたり、集団で囲んで謝罪を要求し、泣き出すまで追いつめるといった事態が発生している。

 YouTubeには、韓国系米国人生徒が製作した「日本軍慰安婦強制連行劇」が投稿されている。学内コンテストに参加した作品だそうだが、逃亡を企てた韓国人慰安婦が日本兵に刺殺され血が溢れるシーンで終わっている。昨年9月には、事態を憂慮した日本人母親グループが安倍首相に嘆願書を提出した。よほどの懸念がなければしないことだ。

 シドニーではこんなことがあった。日本人の母親が幼い娘を連れて韓国人が経営する日本食レストランに入った。韓国人のウエイターが子供に出した水をストローで飲むなり、娘が「熱い!」と叫んで泣き出した。出されたのは水ではなく、熱湯だったのだ。

 娘は喉を火傷した。慌てた母親が「水をくれ」と頼んだが、韓国人従業員たちは黙って顔を見合わせるばかりで対応しない。やっとしぶしぶ水を出すのに5分以上も経っていた。こんなことは、慰安婦像騒ぎが起こる前は聞いたことがなかった。この母親は、韓国の異常な反日が身近に迫ったことを悟って恐怖を感じたという。

 おわかりだろうか。慰安婦問題は、「日本の名誉、英霊の名誉の棄損」といった次元を通り越して、異常な反日教育によって洗脳された若い世代による日系住民への直接的攻撃の局面に入っているのだ。日韓合意は、異様な反日教育にお墨付きを与え、「将来の世代に謝罪の重荷を背負わせない」どころか「今を生きる日本の子供たちに、文字通り煮え湯を飲ませている」のだ。
慰安婦問題を焚き付ける「本当の敵」

 この尋常ならざる事態にどう対応するか、AJCNの意見を申し述べておく。

 まず、駐韓大使の帰国や通貨スワップの協議停止などの制裁措置は、絶対にこちらから緩めてはいけない。繰り返すが、日本は完全になめられている。強きに媚び、弱気をくじくのが韓国の伝統的民族性だ。釜山とソウルの慰安婦像が撤去されるまで、事実上国交断絶でも構わない。韓国が折れて謝罪し、行動で示すまで、絶対にこちらから歩み寄ってはいけない。「条約も守れない国家と協業することは不可能」と宣言してよい。こちらは何も困らない。
韓国・釜山での慰安婦像設置を受け、帰国した長嶺安政駐韓大使=1月9日午後、東京・羽田空港(鈴木健児撮影)
 さらに、慰安婦問題を焚き付けているのは日米韓の離反を画策する北朝鮮直属の組織だとはっきり言った方がいい。韓国政府は北朝鮮の工作機関をコントロールする能力をとうに失っているから、自分では何も解決できないままに、新しい政権が一方的に破棄を通告してくる可能性が高い。その機会を捉え、韓国の「でたらめさ」を徹底的に世界に喧伝したうえで、本格的な歴史戦を開始する。

 その時は政府が責任を持って、「慰安婦問題とは何だったのか」を明確かつ詳細に定義しなくてはならない。つまり、立論するということだ。明確な立論なくして反論しても無意味である。相手がどう思おうと、これが我々がまじめに研究して得た結論ですと宣言することから始めなくてはならない。ディベートの基本だ。

 杉山晋輔審議官(当時)が国連で口頭で反論するだけでは甚だ不十分だ。外務省のホームページはお詫びと償いの言葉だけが溢れかえり、何の事実検証も記していない。それが日本の名誉の回復に全く役立たないことをいい加減に認めて、やり直すしかない。明確な立論をしないまま、第一次政権の時のように、安倍首相が単騎出動すれば、戦艦大和の水上特攻よろしく一方的な猛攻撃を受けてしまうのは当然だ。

 私自身、多くの海外メディアから「慰安婦問題は、日本政府が正式に認め、謝罪して賠償金まで払ったのだから、もはや議論の余地がない。歴史的事実に関する像を建てても、日本人への人種差別には当たらないのではないか」という質問を多く受ける。私がカメラの前で言葉に詰まるのを期待するかのようだ。

 しかし私は平然と答える。「安倍首相は安全保障などの重要事項を優先して合意を結びましたが、強制連行や性奴隷化を認めたわけではありません」。相手はたいてい「なるほど」と言って質問を変えてくるが、まず政府が明確な立論をしない限り、一民間人の議論には限界がある。将来の世代に煮え湯を飲ませたくないのなら、これを最後のチャンスと心得てしっかりやってもらいたい。さもなくば、日本人は軍隊を使って生理前の少女を拉致して性奴隷にした極悪民族として永遠に歴史に刻まれることになるだろう。
まず邦人保護から着手せよ

 その一方で、外務省は海外での邦人保護を真剣に考えなくてはならない。外務省がまずしなくてはならないことは、慰安婦像をプロパガンダツールとする韓国の反日教育によって、海外で日系住民に対する差別やいじめが顕在化していることを認知し、政府として憂慮していることを公表することだ。慰安婦像が単なる記念碑ではなく、反日という政治目的を推進するためのツールであることを日本政府が公式に認めることが重要だ。

 反日団体は「慰安婦像は二度とこのような悲劇が起こらないように祈念するための平和の像です」とうそぶいて同情を引きながら、公然と反日活動と反日教育を展開している。AJCNはこの動きに対抗して、昨年12月、豪州人権委員会に対し、日本人への偏見と差別を醸成する目的の慰安婦像を教会の駐車場からよりプライベートな場所へ移設することを求めて提訴した。民間の母親と父親がリスクを冒して戦っているのに、外務省が傍観するなら、日本はもはや国家の体を成していない。

 もうひとつは、韓国という病んだ国家の崩壊に備えることだ。韓国は北朝鮮という白アリに食い荒らされた家屋と同じで、近い将来倒壊する可能性が高い。そもそも、韓国にはコアがない。なんでも強引に韓国発祥にしたがるウリジナル、整形手術の氾濫、海外への売春輸出と、どれを取っても劣等感と倫理の頽廃を反映している。

 そしてこともあろうか、反日を唯一の民族を束ねる綱にしてしまった。歴史的事実など興味もない。北朝鮮に利用されているともわからず、これなら日本を叩けるという、被害者ファンタジー(恨タジー)に逃げ込み、狂奔している。

 これはもう、社会学でいうところの「アノミー(無規範、無原則状態)」と言っても過言ではないだろう。来日した韓国人が駅のホームから人を突き落としたり、100以上の仏像を棄損するなどの常軌を逸した犯罪行為に走るのもアノミー発生の証左だ。

 そのような暗い情念に取りつかれた民族は自ら溶解し、北朝鮮に取り込まれていってしまうだろう。そのプロセスには幾つものパターンが有り得るが、国際政治学者の藤井厳喜氏が指摘するように、大量の難民が日本に押し寄せる可能性がある。彼らは当たり前のような顔をして助けを求めてくるだろう。

 ここで、海外の移民国家に長く暮らす者として明言しておくが、お人よしの日本人に大量の移民を制御する能力はない。これまでやってこれたのは、移民の数が人口比で圧倒的に少なかったからだ。

 敵性国家からの移民なり、難民の人口が臨界点を越えて、参政権を持つようにでもなったら、「ここは自分たちの国だ」とばかりに傍若無人を始めるのは確実だ。一旦そこまで行ってしまったら、時計の針を戻すことは不可能で、ドイツ以上の壊滅的打撃を被るだろう。対馬海峡が日本の国防ラインになる日が遠からず来る。

 日本という国も大分壊れてきたが、それ以上のスピードで世界秩序が音を立てて崩れていく。日本民族はこの難局を乗り越えることができるだろうか。今回の釜山慰安婦像への対処がその試金石となる。日本政府は、冷徹に現実を見据え、まずは邦人保護に着手して欲しい。日本の復活はそこから始まる。

この記事の関連テーマ

タグ

韓国を信じたら、やっぱりこうなった

このテーマを見る