元慰安婦女性の意思とは関係なく、彼女らは抗日民族運動の象徴となり、韓国内では、その言動を批判したり、支援団体の主張に反する言動を取ったりすることはご法度になっている。韓国内では「小学生(国民学校生)まで慰安婦として動員された」「朝鮮人従軍慰安婦は20万人いた」「軍による慰安婦狩りがあった」などという真偽のほども定かではない言説が堂々と語られているが、これらの言説を公の場で批判するのははばかられる雰囲気である。また、慰安婦支援団体および一部元慰安婦女性の意に沿わないことを著書(『帝国の慰安婦』)に書いたという理由で、世宗大学校の朴裕河教授が刑事告訴され、民事訴訟まで起こされたのは、その好例と言えるだろう。

 しかし、今や生存している元慰安婦女性も残り少なくなっている。さらに、昨年の日韓合意に基づき設立された財団(「和解・癒やし財団」)から、日本政府による拠出金を受け取った元慰安婦女性も相当数にのぼっている(このことについては韓国ではほとんど報じられていない)。

日韓両政府が合意を交わしてから1年、合意に反対する集会で
少女像に自分のマフラーを巻く女性
=2016年12月28日、ソウルの日本大使館前
日韓両政府が合意を交わしてから1年、合意に反対する集会で 少女像に自分のマフラーを巻く女性 =2016年12月28日、ソウルの日本大使館前
 もし、元慰安婦女性がすべて他界してしまったり、全員が日本政府からの拠出金を受け取ったりしてしまったら、支援運動のよりどころがなくなってしまう。そうなると慰安婦問題は風化してしまい、支持者の支援もなくなり、韓国国民一般の関心も薄れてしまう。それを防ぐためには、絶対に風化しない、よりどころが必要となる。それが「少女像」なのである。

 このことは仏教における仏像に置き換えると、理解しやすい。仏像は釈迦の生存時や入滅当初には作られなかった。しかし、入滅後には仏教の教理を民衆に広めるという必要に迫られ、仏像はアジア各地で作られていくことになる。少女像もこれと同様である。お気づきの方も多いと思うが、少女像の画像や動画を見ていると、支援者たちは像にマフラーを巻きつけたり、帽子をかぶせたり、傘を差しかけたり、はなはだしくは使い捨てカイロを貼り付けたりしている。お地蔵様によだれ掛けや頭巾をかぶせたりするのと似たような趣向である。少女像が単なるオブジェならば、こうしたことは行わないはずである。少女像が元慰安婦女性に代わる、老化も他界もしない「ご本尊」としての役割を果たしていることのあらわれである。

 この少女像であるが、ソウルでも釜山でも公道上にこうした銅像を建てるのは法律違反である。また、日本政府が繰り返し主張しているように外国公館の尊厳を定めたウィーン条約にも明らかに違反している。慰安婦像はそうした条約や法律を超越した、神聖にして犯すべからざる存在なのである。これに異論をさしはさむ輩は「異端者」「背教者」である。