田中秀臣(上武大学ビジネス情報学部教授)

 日本にはさまざまな経済上の「逆神」たちがいる。株価や為替レートの予想をすると、まったく真逆の方向に相場が振れるエコノミストや経済学者たちのことだ。もちろん毎回逆神たちの予測が正しい(予測をした本人たちにとっては間違いなのだが)のかどうかを実証した研究者は知らない。
晴れ着姿の女性が見守る中でスタートした東京株式市場=1月4日、東京証券取引所(AP)
晴れ着姿の女性が見守る中でスタートした東京株式市場=1月4日、東京証券取引所(AP)
 ところで世界経済、日本経済の予測もやはり難しい。昨年だけみても、イギリスのEU離脱やトランプ氏の大統領当選による世界経済へのショックをいい意味でも悪い意味でも正確に言い当てたエコノミストや経済学者はほとんどいない。それに予測が当たったとしても「まぐれ当たり」ということもある。

 筆者もリーマン・ショックの後に、この種の「(世界経済危機の)まぐれ当たり」で知名度をあげた何人かのエコノミストについて、マスコミや一般の方々から意見を求められたことがある。残念ながら、「それは(運がよくて)すごいですねえ」と言うしかできなかった。本当にそう思う。常に経済を「バブル」「危機的な状況」であるといい続けて、それが数年、10年、いや20年という時間の中で「的中」しても、あまり筆者には感心するところはないからだ。

 さてこのような「逆神」たちと同じかどうかは、筆者には判断がつかないのだが、現在の日本の経済政策-特に日本銀行の金融政策-を批判する人たちの中に、「金融岩石論者」とでもいうべき人たちがいる。これはなにか。

 坂に岩石があり、びくともしない。だがこれをいったん動かすと、猛烈な勢いで坂を転がりだしてしまう。これと同じで、日銀がマネーをどんどん増やしても物価はまったくあがらない。しかしいったん上がりだすと、どんどん物価は上昇してハイパーインフレ(猛烈なインフレ)になってしまう、という理論である。

 この金融岩石理論の主張者は実に多い。特に同じ「種族」なのだが、日本国債の岩石理論も支持者に困らない。日本の財政は危機的な状況だ、いまは国債価格が安定しているように思えても、少しだけでも国債利子率が上昇(すなわち少しだけでも国債価格が低下)すれば、あれよあれよと国債価格は暴落し、日本の財政は破綻してしまう、というものだ。このハイパーインフレと財政破綻のふたつの岩石理論は、ほとんど表裏一体化しているので、両方とも主張する人が多い。