服部孝章(立教大名誉教授)

 ここ数年の内閣支持率と政治動向に関する世論調査結果の乖離はどのように分析すべきなのか。特定秘密保護法、安保法制、年金法改正案、カジノ法案の政府方針への疑義は、各種世論調査で過半数を超えているが、その時々の安倍内閣支持率は50%を超えたりするなど現政権にとっては喜ばしい状況が続いている。

 各報道機関の調査で大きな違いはない。なぜこんな乖離が起きるのか。安倍首相以外に政権政党にはトップを担当しうる政治家がいないと社会は見ているからか。それとも、信じられないほど野党に政策発信能力がないせいなのか。あるいはマス・メディアの報道姿勢のせいなのか。
NHK会長の選考過程の透明化を求める記者会見を開いた服部孝章氏(右)、小林緑氏(右から2人目)ら=10月31日午後、衆院第2議員会館
NHK会長の選考過程の透明化を求める記者会見を開いた服部孝章氏(右)、小林緑氏(右から2人目)ら=10月31日午後、衆院第2議員会館
 2017年1月のNHK会長任期満了を前に、2016年秋から現会長の再任をめぐる動きが新聞で報じられ始めた。またしても過去を検証せず、未来の理想像を語ることなしに、人脈や政治力のなかで人事が決められるのか、といった諦めを感じていた。だが、これではいけないと思い、10月末に「次期NHK会長選考にあたり籾井現会長の再任に反対し、独立した公共放送に相応しい会長の選任を求めるとともに、透明な選考過程の下で推薦・公募制を採用するよう求める要望」を呼びかけ人17名と賛同者約100名の名簿とともに、NHK経営委員会に渋谷の放送センターで手渡し、国会議員会館で記者発表をした。 
 
 「アベノミクス」の是非を主な争点として成立した第2次安倍政権だったが、特定秘密保護法、そして安全保障関連法を次々と成立させ、7月の参院選にも勝利して3分の2の勢力で改憲を目指している。

 この間、第2次安倍政権は断続的にメディアに対する規制介入を繰り返し、その中核は「公平中立は政権が判断する」というものあった。もっとも明確な事例は、2014年の衆院選に在京テレビ局にあてた文書「選挙時期における報道の公平中立ならびに公正の確保についてのお願い」である。

 自民党の萩生田光一筆頭副幹事長・福井照報道局長の連名で各局の編成局長・報道局長にあてたもので、「文書は衆院解散前日の20日付で、自民党総裁特別補佐の萩生田光一筆頭副幹事長が自民党記者クラブに所属する各局の責任者(キャップ)を個別に呼び出し、手渡していた」(「西日本新聞」2014年11月28日朝刊)。新聞各紙は西日本同様同日の朝刊で報道したが、呼び出して手渡していたとは伝えていない。この西日本は1面トップと2面で解説記事を載せるなど大きく紙面を割いた。