加谷珪一(経済評論家)

 人口減少が日本の社会や経済に極めて大きな影響を与えていることについて知らないという人はほとんどいないだろう。だが、ひとくちに人口減少といっても、その動きは単純なものではなく、社会や経済への波及経路も様々である。本稿では日本の人口動態について分析し、人口減少社会に対してどう向き合えばよいのか考察してみたい。

 日本における2016年12月1日現在の総人口は1億2692万人(総務省統計局による概算値)となっており、前年比で約16万人、率にして0.13%減少した。日本では人口減少という言葉が一人歩きしているので、急激に人口が減っているとイメージする人もいるが実際はそうでもない。

 2000年の人口は約1億2693万人、2010年の人口は1億2806万人だったので、総人口そのものはあまり変化していない。過去15年間は「人口減少社会」というよりは「人口横ばい社会」だったというのが正しい認識である。

 だが、人口が横ばいだからといって社会や経済に対する影響が軽微というわけではない。総人口が変わらなくても高齢化が進み、若年層人口の比率が減少することで、社会のあちこちに歪みが生じるからである。

 過去15年間で34歳以下の人口は約22%減少したが、一方、60歳以上の人口は43%も増加した。長期にわたって不景気が続いているにもかかわらず、企業では人手不足が深刻な状況だが、その主な理由は、若年層の労働人口が急激に減っているからである。

 最近、注目を集めている長時間労働の是正など、いわゆる働き方改革についても、実は若年層労働人口の減少が大きく関係している。特に外食や小売といった業界は、労働力の中心が若年層労働者であることから影響は大きい。

 牛丼チェーンの「すき家」は2014年、深夜の1人運営体制(いわゆるワンオペ)において過重労働が横行しているとの指摘を受け、深夜営業の大幅な見直しに追い込まれた。過重労働が常態化したのは同社の体質にも原因があるが、労働市場で人を確保できないという状況が背景となっている。
ワンオペが指摘され営業時間の見直しに追い込まれた「すき家」
ワンオペが指摘され営業時間の見直しに追い込まれた「すき家」
 昨年末には、「ガスト」や「ジョナサン」を展開する「すかいらーく」が深夜営業を大幅に縮小すると発表し、ロイヤルホストを運営するロイヤルホールディングスも24時間営業の廃止を決定している。これについても事の本質は人手不足である。24時間営業をこなすために必要となる人員の確保が難しくなっており、採算が悪化したことが最大の原因である。

 では、今後も同じような傾向が続き、企業は引き続き若年層労働力の確保に苦労するのかというとそうではない。総人口の減少はこれから本格化することになるのだが、人口構成の変化についても、これまでとは大きく様変わりする可能性が高いのだ。

 国立社会保障・人口問題研究所の将来推計によると、2040年の総人口は1億728万人と現在より15%ほど減少する見込みである。しかし、60歳以上の人口はまだまだ増加が続き、2040年には今より374万人多い4646万人になる。

 一方で、企業の労働力の中核となっている35歳から59歳までの人口は、現在との比較で何と26%も減少してしまう。次の20年間、日本社会は中核労働力の減少という大きな問題に直面することになる。