【世界潮流を読む 岡崎研究所論評集】



岡崎研究所


 米Center for the National Interestのカジアニス国防研究部長が、11月20日付 Washington Times紙掲載の論説にて、トランプ次期政権は、中国を米国や同盟国にとっての最大の脅威と認識し、明確な競争相手と位置付けるべきである、と述べています。論旨、次の通りです。
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 トランプ次期大統領は、就任当日から、冷戦終結以来見られなかった多くの危険や落とし穴に直面するであろうが、米国の国益や同盟国のみならず、我々の経済に対しても明確かつ重大な脅威となるものは、中国の台頭である。

 たった数年のうちに、中国は日本を東シナ海における危機寸前まで追いやり、今は台湾の民主主義に圧力をかけ、南シナ海に島を建設することで年間5兆ドル以上を生む海上貿易と海洋への開かれたアクセスを脅かしている。

 こうした中国へのオバマの対応はアジアへの「ピボット」あるいは「リバランス」であった。米国の軍事力が歳出強制削減の影響を受けたことも相まって、ピボットは、偉大な外交政策の標語として、単にアジアにおける中国の支配速度を緩めただけのものとして、歴史に記されることになるであろう。

 トランプ大統領とそのチームは、嫌がらせを続ける中国を確実に監視し、アジア太平洋地域で中国の影響圏を変更しようとするいかなる思惑をも抑止するための大戦略を構築しなければならない。

 例えば、トーンを変えることは、出発点としては、最も簡単かつ効果が高い。まず米国は、中国が「責任ある利害関係者」になるとか、「平和的台頭」をして欲しいといった願望を込めた概念を取り払わなければならない。中国には、米国によって築かれたいかなる国際システムにも加わろうとする意思はない上、彼らはすでに台頭している。トランプ政権は、中国は競争相手であると宣言し、利害が重なるときにだけ協力すべきである。必要なときに相手を呼び出すことは恐ろしいことではない。

 よりタフな対話からより強い行動が生まれうる。トランプの安全保障チームは、中国が単に我々の同盟国を追いつめたり、米国の重要な国益を脅かしたりできなくするための軍事戦略の構築を始める必要がある。それは、アジア太平洋は中国の覇権の及ぶ場所でないと確信させる明確なメッセージとなるだろう。

 貿易もトランプの対中政策の一部でなくてはならない。もしTPPが本当に死んだのだとすれば、二国間協定を通じて、米国のアジアへの関与と我々の経済的繁栄を確かなものにする必要がある。多くの国が、米国の経済的関与の強化を歓迎するであろうし、それこそが各国の経済が中国に縛られているわけではないと知らせる最良の方法となる。

 このような簡単なステップから始めて、トランプ大統領は、従来の対中政策の間違いを正し、何十年にも渡って米国が直面することになる外交政策上の最大の課題に向き合う広範な戦略を打ち出すことができる。

出典:Harry J. Kazianis,‘The greatest challenge to Trump’(Washington Times, November 20, 2016)
http://www.washingtontimes.com/news/2016/nov/20/donald-trumps-greatest-challenge-will-be-china/

 今日の世界は不安定要素に満ちているが、中でも米国の利益と米同盟国の利益にとって、明確かつ実際的な脅威は中国の台頭から来ている、としてトランプ政権にとっての中国への対処の重要性を指摘した論評です。アジア太平洋において主導権を握ろうとする中国への対応策を早急に打ち出すべし、とする筆者の指摘は時宜を得た的確なものです。