『ファーストトラック(高速軌道):2030年のエイズ流行終結に向けて』と題した国連総会関連イベントが9月25日、ニューヨークで開催されました。その会合に関するUNAIDSのプレスレリースの日本語仮訳がHATプロジェクトのブログに掲載されています。
 ☆ HATプロジェクト(HIV/AIDS Translation Project)とは
 エイズ対策の面から重要と思われる英文プレスレリースなどの資料を日本語に翻訳してブログで紹介するプロジェクト。国内のエイズ対策の研究者、NPOなどが世界の動向を把握できるようにするための共同利用施設的な発想で、特定非営利活動法人エイズ&ソサエティ研究会議(JASA)が2003年から続けている。ブログURLはこちら
 
 最後の部分で「エイズ流行終結」(ending the AIDS epidemic)の定義も紹介されています。参考までに紹介しておきましょう。

 《エイズの流行の終結とは、HIV感染の拡大が制御または封じ込められ、社会及び個人の生命に対するウイルスの影響が非常に小さくなり、結果として健康障害や偏見、死亡、孤児などが大きく減少する状態を意味する。また、エイズの影響が低下することにより、平均余命が長くなり、人々の多様なあり方や権利が無条件に受け入れられ、生産性が向上し、コストが下がることも意味している》

 ああ、なるほどそういうことだったのね。日本の場合はどうでしょうか。これだとかなり基準をクリアしている印象も受けます。でも…。

 何年か前にUNAIDSのミシェル・シデベ事務局長が来日した際、記者会見で「エイズ流行終結が実現出来るとしたらそれは日本だ」みたいなことを言って、司会をしていた私はずっこけそうになったことがあります。確かに世界の多くの国から見れば、いまなお年間1500人程度の新規報告で抑えられている日本の現状は素晴らしいといいたくなるのかもしれません。ただし、流行は縮小に転じたとは言えない状態がいまも継続しています。会見の後でaktaを訪れたシデベ事務局長に対し、確か長谷川さんが「政府に近い某団体関係者による都合のいい説明ばかり真に受けないでちゃんと現実をみてほしい」と苦言を呈し、私も尻馬に乗って「そうだ、そうだ」といっていたような記憶があります。

 シデベ氏は翌日のなにかの会合のスピーチできちんとその辺りの軌道修正を行っていました。さすがと思った次第。

 日本の場合、シデベ氏が抱いた感想に納得できる面もありますが、それでもWe have our problemであります。endingにはまだ遠い。エイズはまだ終わっていない。定義に即して言えば、結果として偏見が大きく減少している状態とはまだいえません。人々の多様なあり方や権利が無条件に受け入れられ・・・ているわけでもない。生産性は…という以前に就労に関しては厳しい環境が依然、存在しています。
 東京都の福祉保健局のサイトから冊子『職場とHIV/エイズハンドブック』の第1弾「人事・労務・障害者雇用担当の皆様へ」、第2弾「HIV陽性者とともに働くみなさまへ」の2冊がダウンロードできます。参考までにこちらもご覧になってください。