元高校教師 本間一誠

沖縄県知事選に向けての情報操作が始まった

 足かけ4年に亘つて注視して来たNHK番組の中でも、特に関心を払つて見て来たのが沖縄関連の報道である。そこに、沖縄メディアと軌を一にした歪んだ歴史観、露骨な反日反戦の姿勢が如実に窺へるからだ。もう何度も書いてきたが、今回も沖縄関連番組に絞つて書くことにする。それといふのも来たる11月16日には、日本の将来にとつて死活的に重要な沖縄県知事選挙が行はれるからだ。これまでの報道姿勢から考へると、必ずNHKは、沖縄の被害者意識を一層煽るやうな形で、普天間基地の辺野古移設にブレーキをかけて来るだらう。そして、実際は大幅な規模縮小を伴ふキャンプ・シュワブへの「移設」なのに、殊更「新基地建設」反対と言ひ募る勢力、或いはシナの意を迎へる「龍柱」建設を推進してゐる那覇市役所内外の反日勢力の後押しをするに違ひない。実際、それはもう露骨に始まつてゐる。本土と沖縄の分断を図るNHKの情報操作は、既に随分早くから始まつてゐるが、今後は11月の県知事選から来年の敗戦70年に向け、一層その傾向に拍車がかかるのではないかと思ふ。

 NHKが沖縄県知事選挙の争点を、敢へて辺野古移設の是非に持つて行きたいことは明白だ。さりげなく印象操作を始めてゐる一例を挙げておく。8月14日は基地移設作業のため、名護市の辺野古沿岸で関係者以外立入禁止を示すブイの設置が開始された日だつた。この日、「おはよう日本」は制限水域のブイ設置開始を報じ、無断で入つた場合は日米地位協定に伴ふ刑事特別法で検挙対象になることにつき、反対派の市民グループから抗議活動を抑圧するものだとの批判が出てゐることを伝へた。その日の夜7時半から75分にわたり、「コロッケぱらだいす・ごきげん歌謡笑劇場~夏休み!沖縄・名護スペシャル」なる娯楽番組を放送した。内容は出演者らによる地元紹介や歌、名護を舞台にした他愛のない人情笑劇ではあつたが、全国数多の市町村の中で、わざわざこの日に名護市である。どうにも素直になれない。余り意識の高くない視聴者の意識を名護市に向ける効果はあつただらう。こんな穏やかで平和な所に、無理に海を埋立てて基地を作るなんて、といふ訳だ。

 この番組のすぐ後、「ニュースウオッチ9」はボートやカヌーで抗議する「市民グループ」と海保の睨み合いの状況を映し、キャンプ・シュワブ前で「新基地反対」のプラカードを持つて、移設反対の拳をあげる人々の抗議風景を映す。更に沖縄戦の聞き取り活動をして来たといふ「辺野古区民の会」のN氏が、「政府のやり方には憤りを飛び越えて涙も出ない」とか「戦争が起きると真先に狙はれるのは基地がある所。辺野古住民も先の大戦で68名犠牲になつてゐる。基地建設は何としても阻止」などと語る。この理屈で言へば国中丸腰でゐるのが一番安全といふことになる。実情はキャンプ・シュワブのある地元辺野古住民の殆どは移設容認なのだが、結局その声は全く報じられなかつた。お笑ひ娯楽番組と軽く見てはゐられない。かういふニュースの合間に何げなく名護市で催した娯楽番組を嵌め込めば、ある種の宣伝効果はあるだらう。心理戦の手本ではある。

基地移設反対を煽る「時論公論」は放送法違反

 辺野古移設報道に関してもう一つ挙げておく。9月13日の「時論公論~説明置き去りで進む辺野古移転」(西川龍一解説委員)である。最初から「辺野古沿岸部で準備作業が本格的に始まつて1カ月。この間、移設に反対する人達の抗議活動が継続する中、現場の作業は進み続けてゐる」と、専ら反対派と同じスタンスで語る。西川氏のこのコラムを手短に要約すれば、昨平成25年暮に仲井眞知事が埋立申請を承認したが、その後も反対派の抗議運動は続き、宜野湾市や名護市の民意も移設反対が圧倒的に多い。国は住民が求める負担軽減とは何かに耳を傾けよ、といふ内容。

 西川氏は、制限水域を示すブイ設置後の8月23日、埋立地に隣接するキャンプ・シュワブのゲート前で「三千六百人の大規模な抗議集会」が開かれ、その後も移設反対の抗議活動が続いてゐると言ふ。氏は平成24年10月23日の「時論公論」でも、同年9月9日の「オスプレイ配備反対県民大会」を取材し、実際集会を見てゐるのに10万人を越える人が集まつたと述べた。公安筋の情報では約2万人。西川氏は主宰者発表の大嘘をそのまま伝へた訳だ。今回も全く同じで、3600人といふのは主宰者側発表の数字で、翌日の「沖縄タイムス」1面にもでかでかと載つた。

 しばしば引用する沖縄発のブログ「狼魔人日記」(管理人・江崎孝氏)によれば、キャンプ・シュワブのゲート前はせいぜい入つて千人程度、当日もそんなものだつたらうとのこと。放送法四条三は「報道は事実を曲げないですること」と明記してゐる。事実とかけ離れた誇大な数字で、反対集会が盛り上がつたと印象づけるのは放送法違反だらう。自分の目で見よとは前にも書いた。

 普天間基地移設問題を考へる時の大前提は、日本の存立にとり、現在も将来も沖縄が持つ地政学上の絶対的な重要性は変らないといふこと、そして、普天間基地の危険除去と北部振興、及び即応性ある堅固な国防体制の構築、これらを満たすには辺野古への移設しかないといふこと、この二点であらう。だが西川氏の解説は専ら基地撤去、もしくは移設反対派の立場に身を置いて己の心情を吐露し、政府は反発する地元住民に説明責任を果たせと言ふばかりだ。この稿を執筆中の現時点で、シナ海警の船が連続39日も尖閣諸島の接続水域を遊弋してゐる。時に平然と領海侵犯もする。西川氏はこの危機の常態化には全く言及しない。「クローズアップ現代」同様、実に奇異としか言ひやうがない。この厳しい現実を抜きにして沖縄の基地移設問題は論じられないではないか。

沖縄県市議選――NHK出口調査結果に疑問

 では西川氏自身は危険な普天間基地をどうせよと言ふのか、どうやつて沖縄や本土をシナの侵略から守れといふのか。それは語らず、次のやうに言ふ。「移設に肯定的な人の中にも、辺野古への移設は新たな基地機能の強化、基地の固定化であり、負担軽減には繋がらないのではないかと疑問を持つ人もゐる」と。移設容認派の人にも色々ゐるだらう。だがこの発言も西川氏の心情に沿つてピックアップされ、移設容認の人でさへかう言つてゐるとの印象操作をしてゐるとしか思へない。国外、県外への移設は不可能なのだから、西川氏のコラムの方向を延長すれば、結局残る道は移設の中止、普天間基地は閉鎖撤去といふことになる。既に工事に入つた現在、それはあり得ないことだが、安倍政権は民意を無視して移設を強行してゐるとのアピールにはなる。一番喜ぶのは心理戦、世論戦をしかけてゐるシナ共産党だらう。

 西川氏は「抗議活動の根底にあるのは国への不信感」と言ふが、この番組に映つてゐる抗議活動をする人々をよく見よ。幟に記された言葉や団体名を見ても地元の一般住民ではない。県内外の左翼活動家か日当目当ての老人達である。例の辺野古テント村の住人と同類の人々であり、それを恰も地元住民であるかのやうに言ひなすのは殆ど詐術としか思へない。それはもう通用しない。西川氏は9月9日に現地取材し、「平日にも拘らず」反対派の人々が20艘ほどのカヌーでボーリング調査を止めろと訴へてゐた(映像あり)と共感の口吻で語る。普通の人間は平日には勤めがある。平日の白昼にカヌーで海保のボートに突つかかるのはバックがあるプロ市民でないとできまい。

 どうしても疑義を呈しておきたいことがある。また数字の問題だ。このコラムで、9月7日の沖縄県市議会選挙に際し、NHKが宜野湾市と名護市で辺野古移設に賛成か反対かの出口調査を行つた結果を紹介してゐる。宜野湾市では反対68%、賛成32%、名護市では反対78%、反対22%であつたといふ。西川氏は負担軽減になる筈の宜野湾市でもこんなに反対が多い、これは移設が負担軽減、危険除去には繋がらないと見てゐる市民が多い結果だと言ふ。数字の印象効果は大きい。だがどうも変だ。宜野湾市(定数26人)では移設容認の与党15人は全員当選してゐる。名護市(定数27名)では選挙前に県外からの住民票移動が約1600人以上(「チャンネル桜」惠隆之介氏談)といふ異常事態の中で、移設反対、基地撤去を掲げる稲嶺進市長の与党14名が当選、公明党2名を加へ過半数を反対派が制したが、実は与党は前回より一議席減らしてゐる。宜野湾市の選挙結果とNHKの出口調査結果は、その数字が余りに乖離してはゐないか。また名護市への左翼と覚しき大人数の住民票移動が実際にあつたとすれば、それに言及しないのはフェアではない。出口調査はどのやうに行はれたのか。何より選挙結果が出たのに、今更出口調査の数字を詳しい分析もなしで強調することに強い疑問を感じる。これも印象操作ではないのか。

「歴史秘話ヒストリア」は琉球独立工作だ

 9月3日放送の「歴史秘話ヒストリア・はるかなる琉球王国~失われた南の島の記憶」はとにかく酷かつた。昨年、この「歴史秘話ヒストリア」が伊勢の遷宮を扱つた時も、根底に流れる反日史観に強い憤りを感じたものだつた(本誌昨年八月号)が、今回もまた同様の気分になつた。近年の東シナ海の海空の状況や、仄聞する沖縄への工作活動の浸透を考へれば、この番組は殆ど外患誘致、琉球独立工作を公共の電波を使つて堂々と実行してゐるとさへ思はれる。

 冒頭のナレーションはこんな具合である。「日本列島の南に位置する沖縄の島々。嘗てここに琉球王国と呼ばれる独立国がありました。海を通じ、日本や中国をはじめ、アジアの国々と繋がつてゐた琉球は独自の文化を育んだ海洋国家でした。(中略)明治を迎へ、近代化を進める日本政府を前に琉球は存亡の危機に立たされます。強引に進められる日本への併合。さらには琉球を分割する計画まで。そんな中、琉球を守るために立ち上がつた若者達がゐました。時代の荒波に翻弄されながらも、必死に抗ひ続けた琉球王国の知られざる奮闘物語です」云々。冒頭のこの語りが簡潔にこの番組の内容を語つてゐる。

 番組では、嘗て琉球王国はシナと日本といふ大国の間にあつて、その巧みな外交術と中継交易により大いに栄えたこと、幕末のペリー来航時には通訳の板良敷朝忠の巧みな交渉術で王国の危機を乗り切つたことなどが語られる。琉球王国はシナとも日本とも異なる独自の文化伝統を持つた平和で輝くやうな国といふイメージを演出する。日本の「琉球処分」がいかに理不尽な蛮行であつたかといふことを印象づける仕掛けである。

 琉球王国の華やかな文化は冊封使節をもてなすところから生まれた宮廷文化であり、王族や上級士族の奢侈を支へた民衆は、重税と天災のために常時塗炭の苦しみの中にゐたことは全く語られない。明治になつても続いた宮古、八重山の過酷な人頭税のことや土地が私有できなかつたこと、農民には教育は施されず、従つて識字率がほぼゼロであつたことも全く語られない。それなのにひたすら琉球王国が美化されるのは、そこに琉球独立への情報工作が込められてゐるとしか思へない。

最後のシーンで現れたCCTVの馬脚

 番組中の「エピソード3~琉球を守れ! 若者たちの奮闘」が眼目の部分である。明治政府が派遣した内務官僚松田道之による「琉球処分」は、武力の威嚇のもとにいかに強引に行はれたかが語られ、明治政府の動きに抗して清国に救援を求めて奔走する幸地朝常らの活動や、救援要請の事ならずして自殺した林世功らは極めて同情的に語られる。特権階級だつた帰化人の子孫達が、琉球王国存続のために清国に救援を求める姿を過度に英雄的に描くのには強い違和感を覚える。全ては「琉球処分」によつて日本が独立国であつた琉球王国を滅ぼしたとの俗流左翼史観から来てゐる。

 明治12年3月27日の首里城明け渡しの強制執行(但し一人の死者も出てゐない)、直後の四月四日の沖縄県設置布告に至るまでの過程を仔細に見れば、当時の東アジアの状況から何としても国境を画定して早急に近代化を図らなければならなかつた明治政府が、それでも能ふ限り琉球の処遇に配慮しつつ事を運んだことが見えて来る。この番組のなかで批判されてゐる清国との間の琉球分割交渉も、当時に戻つて様々な要因を丁寧に見なければ、大国の横暴であり明治政府は酷かつたといふだけの話になつてしまふ。事実、番組の印象はさうである。そんなに冷酷な政府なら、沖縄統治に当つて所謂「旧慣温存策」を長期に亘つて忍耐強く続けただらうか。改めて言ふまでもないが、「琉球処分」とは「廃藩置県」を推進する明治政府が、頑固に近代化を阻む独裁の「琉球王府」を解体したことであり、琉球の民衆をも何か専制的に処断したといふことではない。にも拘らず、そのやうな誤つた印象が意図的に振りまかれてゐることはこの番組に見る通りである。

 「やがて日本語教育が徹底されて、本土との同化が進められて行きます。琉球王国は記憶の彼方に追ひやられて行きました」といふナレーションの後、この番組の最後に、今から30年前、帰化人の子孫が住む久米村の人々が祖先の出身地、福建省福州を訪ねて墓参した時の映像を流す。戦争中は敵国に通じる恐れがあるとして、久米村は厳しい監視下におかれたとの説明の後、ナレーションはこの訪問を機に琉球を救はうと尽した人々の功績を見直す動きが始まつたとも語る。更に現在の映像に戻つて、嘗ての久米村に昨年完成したといふ孔子廟(久米至聖廟)を映し、ここでも念入りに、琉球王国を支えた人々の歴史を再確認する場所になつてゐるとの説明を入れる。この廟の前でコメントをするのは「久米崇聖会」なる団体の男性。因みにこの至聖廟設置については、那覇市が特別な便宜を図つた疑ひがあるとして住民監査請求が出てをり、目下審査中である由。エンディングの映像は、空撮映像で首里城から普天間飛行場、更に駐機してゐるオスプレイと軍用機の地上映像を念入りに流して、最後は移設予定地の辺野古となる。ここまで露骨な反本土、反基地のメッセージを流すのは異常としか言ひやうがない。

 制作統括・木道荘司、ディレクター・森下光泰とあるが、実際はCCTVが作つたに違ひない。

笑えない「お笑い米軍基地」が好きなNHK

 平成24年6月16日に「沖縄慰霊の日」関連番組として再放送された〈Eテレセレクション「基地を笑え~人気舞台で見る沖縄のホンネ」〉、今年7月10日にこれも再放送の〈プレミアムアーカイブス「笑う沖縄・百年の物語」〉をいずれも録画で見た。後者は最初に「嘗て沖縄は琉球王国と呼ばれ、アジアの海洋貿易で繁栄を極めた。しかし王国の富は四百年前、薩摩藩の武力によつて奪はれた。更に1879年、明治政府の侵攻によつて琉球王国は滅亡、沖縄は大日本帝国に組込まれた」とのナレーションが入る。先に述べた「歴史ヒストリア」と全く同じ琉球王国美化史観であり、これは則ち沖縄被害者史観、沖縄捨石史観とそのまま通底してゐる。NHKの流す沖縄関連番組には全て判で押したやうにこの歴史観が張り付いてゐるが、さういふNHKが今、贔屓にしてゐるのが沖縄で人気のコント劇団「お笑い米軍基地」であり、右の二つの番組にも登場する。主宰者は小波津正光氏。沖縄の中学や高校はこの劇団の公演を学校ぐるみで見せに行く。右の番組の中で、高校生が公演を見た後、女子生徒は「基地ハンターイ」と楽しげに声を上げ、男子生徒は「自分も米軍基地に石を投げたことがある」と言ふ。

 この劇団は例へばこんなコントをする。題は「歴史教科書」。教科書の赤い表紙と黄の表紙に穴をあけ、それを顔にはめた夫婦が掛け合ひをする。教科書検定で集団自決への軍関与が削除されたことを風刺してゐるコントだと言ふ。黄の表紙には伊藤博文、聖徳太子、福澤諭吉の顔が見える。

 赤「あなた最近変つたのね!」
 黄「急に何を言つとるんか、お前」
 赤「私に何か隠し事あるんぢやないの」
 黄「ないよ、別に」
 赤「嘘よ、あなた私に内緒で歴史変へたでしよ」
 黄「変へてないよ、そんなもん」
 赤「あなた、私が何か知らないとでも思つてるの。隣の奥さんに聞いたわ。あなた私に内緒で沖縄の歴史、変へたでしよ」
 黄「ギクッ!」
 赤「沖縄県の集団自決は日本軍の指示ぢやなかつた、さう書き換へたさうぢやないのよ」
 黄「いやいや、それはその言葉のアヤと言ふか、ま、その…」
 赤「ひどい! ひど過ぎるわ、あなた。結婚する時は事実だけを載せる、さう誓つたぢやない。ねえ、取消してよ、あなた。ちやんとした歴史、書き換へてよ。もう、バカバカバカ」
 黄「うるさいなあ」(と蹴飛ばし、妻は転ぶ)

  全く笑へないコントだが、NHKや日教組には受けるらしい。7月25日付の「八重山日報」に、この劇団が舞台で皇室揶揄のコントを演じ、そこに出演してゐた役者をCMに起用してゐた企業に市民から問合せがあり、その企業はCMを打ち切つたとの記事が載つた。NHK殿、それでもまだ贔屓にするのですか。
(9月17日)

本間一誠氏 昭和20年生。東京都出身。皇學館大学文学部国文学科卒。国語科教師として鹿児島県、千葉県、三重県の高校に勤務。