中岡望(東洋英和女学院大学大学院客員教授) 

異例な大統領就任式


 1月20日、トランプ氏が45代大統領に就任したが、ワシントンは異様な雰囲気に包まれていた。テレビの画面には映らなかったが、抗議集会が開催され、警察官とデモ隊が衝突する場面も見られた。過去40年で最低の支持率で、70名を超す民主党議員がトランプ大統領の正統性に疑義を挟み、就任式を欠席する異例な事態も見られた。大統領就任演説が終わり、ペンシルベニア通りをホワイトハウスに向かってパレードが行われたが、厳重な警備が敷かれ、通常なら新大統領を一目見ようと路上に人があふれるが、そんな熱気も見られなかった。議事堂とリンカーン・メモリアルをつなぐナショナル・モールも、オバマ大統領の就任式は立錐の余地もなかったが、今回は空間が目立った。

バラク・オバマ大統領の就任式典(写真上、2009年1月20日)と、ドナルド・トランプ大統領の就任式典(写真下、2017年1月20日)のナショナル・モールでの観衆の眺め(AP)
1月20日、トランプ氏の米大統領就任式が開かれた
ワシントンの連邦議会議事堂前に集まった人々(下)。
2009年のオバマ氏の就任式(上)には約180万人が
集まったが、今回は96万人程度だったとみられる(AP)
 トランプ大統領の就任に際して、国内のみならず、国際的にも、先行きに対する不透明感が高まった。既存のルールを無視するトランプ大統領の手法は一部の支持者から喝采を浴びたが、多くの人の不安を煽った。大統領就任後、ホワイトハウスの大統領執務室に入ったトランプ大統領は、さっそくオバマケアの見直しを指示する大統領令に署名した。

 月曜からトランプ政権は本格稼働を始めるが、トランプ大統領はオバマ前大統領が出している移民関連の大統領令を全て廃止する方針を明らかにしている。いわば民主党のオバマ政権を全否定するところから出発することになりそうだ。当初、政権の勢いをつける意味もあり、議会の承認が必要ない大統領令を続発し、政権の存在感をアピールするとみられる。

 トランプ大統領は選挙運動期間中にさまざまな政策を打ち上げている。その中には、大統領令で対応できるものもあれば、議会の承認が必要なものもある。選挙中はレトリックで済んだが、これからは議会での審議が待っている。両院は共和党が多数を占めているが、上院の議席は共和党52議席に対して民主党48議席で、その差はわずかである。

 共和党内にもトランプ大統領に対して厳しい見方をする議員はいる。そうした議員が3名、反対に回れば、トランプ政権の法案を否決することができる。トランプ大統領が共和党をどこまでまとめ切れるのか、民主党がどこまで腹をくくって対抗できるのかで、今後のアメリカ政治の状況が変わってこよう。