エイズとかHIVとか言われても…どう違うのかよく分からないという人もいれば、前に聞いたことがあるけれど忘れちゃったという人もたくさんいると思います。世の中の圧倒的多数の方がそうなのかもしれません。エイズ(AIDS)は「Acquired Immune Deficiency Syndrome(後天性免疫不全症候群)」の略称です。

 人間の体は、HIV(Human Immunodeficiency Virus=ヒト免疫不全ウイルス)というウイルスに感染すると、徐々に免疫の力が低下し、様々な病気にかかりやすくなります。その様々な病気の「症候群」エイズというわけですが、実はそうした症状が表れる以前から少しずつ免疫の力は低下していくので、最近はHIV感染症と呼ばれることもよくあります。 

 つまり、エイズはHIVというウイルスが原因の感染症で、HIV感染症と呼んだ方がいいかなという考え方ですね。感染した後、未治療でいると数年から数十年でエイズを発症するといわれています。人によっても、かなり幅があるようです。 

 また、治療法も大きく進歩しています。感染を早期に確認して適切な時期にHIVが体内で増えるのを防ぐ抗レトロウイルス治療(ART)を開始し、しかも、その治療をずっと続けていくことができれば、長期にわたって発症を防ぐことも可能になっています。
 

《HIVの感染経路は?》

 これまでの研究から感染経路は、 
 ●同性間、異性間の性行為による性感染、 
 ●妊娠・出産時や母乳による母子感染、 
 ●薬物注射の注射器具の共用や輸血などの血液による感染 
にほぼ限られていることが明らかになっています。日常の生活の中で、HIVに感染している人としていない人が一緒に仕事をしたり、勉強したり、スポーツをしたり、食事をしたり、お風呂に入ったり…数え上げればきりがありませんが、そうしたもろもろのことで感染することはありません。 

 ただし、この「日常の生活」の中には、性行為は含まれていません。 

 人によっては、性生活こそが日常の生活に深く関わる行為だという人もいれば、性生活はいわゆる日常生活とは別立てで考えた方がいいよという人もいます。いろいろです。このいろいろを受け入れていくという発想もエイズ対策にはかなり重要です。 

 日常生活であるかどうかの定義はひとまず回避するにしても、性行為に関しては、HIVの主要な感染経路ですから、同性間、異性間を問わず、感染を防ぐための手だてを取ることは大切です。この点は強調しておく必要があります。 

 そのための実行可能な手段として、コンドームの使用といったセーファーセックス(より安全な性行為)によって感染の確率を大きく下げる方法が世界でも広く推奨されています。 

 ほかにも(感染の確率を大きく下げるという意味での)予防の方法はいろいろあります。その「いろいろ」の選択の幅をもっと広げるための研究も世界中で、それこそいろいろ進められています。性感染を防ぐためには、性行為をしないという選択肢ももちろんありますが、それがすべてではありません。 

 そのあたりのことをたとえば、東京都福祉保健局のサイトでは次のように説明しています。

・NO SEX(セックスしない)
 HIVを含む多くの性感染症は性的接触により感染します。若すぎる時期の性的接触は心身にトラブルを起こしやすいので、性的接触をしないという選択肢も考えてみましょう。 

・SAFE SEX(安全なセックス)
 二人とも感染していないことが確実でお互いに他のセックスパートナーがいなければ、二人の性的接触は安全です。 

・SAFER SEX(より安全なセックス)
 エイズは、コンドームを正しく使用すれば防ぐことができます。必ず、ペニスが膣、肛門、口に接触する前に正しくつけるようにしましょう。また、コンドームには、男性用だけでなく、女性用のコンドームもあります。 

 感染の経路は限られており、その限られた感染経路の中での感染の確率を大きく下げる予防の方法も具体的にあるということは重要です。 


 いわずもがなのことかもしれませんが、もうひとつ、忘れてはならない大切なことがあります。 

 世の中にはHIVに感染している人も、していない人も、感染しているかどうか分からない人も、すでに一緒に暮らしています。そのごくごく当たり前の平明な事実を前提として受け止めることからHIV/エイズ対策は出発し、いまも継続しているということです。 

 つまり、性行為を除けば、日常の行為でHIVに感染することはない。したがって、HIVに感染した人が一緒に会社で仕事をしたり、学校で勉強をしたり、レストランで食事をしたりということを妨げる理由はない。HIV感染の予防について考えるときには、そのことが前提になります。 

 そのうえで、じゃあ性感染の予防はどうしたらいいのか、血液の管理はどうしたらいいのか、薬物使用にはどのような対策が必要なのかといったことを具体的に行為に即して考えていくことが大切です。予防対策のためにHIV陽性の人が働いたり、勉強したりすることを妨げる理由はなにもありません。
(東京都HIV/AIDS談話室のサイトから)