天皇陛下の生前退位について、賛成、反対両陣営の“筆頭”である小林よしのり氏と八木秀次氏の2人が150分の激論を交わした。

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小林:八木さんは生前退位に反対なんだよね。認めると皇位が不安定化するとか言ってるけど、まったく理解できん。
83歳の誕生日を祝う「宴会の儀」であいさつされる天皇、皇后両陛下と皇太子殿下=2016年12月23日、皇居・宮殿「豊明殿」(代表撮影)
83歳の誕生日を祝う「宴会の儀」であいさつされる天皇、皇后両陛下と皇太子殿下=2016年12月23日、皇居・宮殿「豊明殿」(代表撮影)
八木:これまで天皇の退位が認められなかったのは、まず政治利用の問題(*)があるからです。その弊害が大きいので、明治に皇室典範を整備する際、当事者の意思が介在しない形で制度設計を行った。誰かの意思で退位や即位ができると、皇位が安定しない。

【*過去、上皇や法皇が政治的影響力を行使したり、時の権力者が天皇を退位させたりする例があった。明治の皇室典範制定時の議論で、伊藤博文は代表例として南北朝の争乱を挙げた】

小林:昔は権力が天皇を利用することがあり得たけど、今の天皇は権力と結びついていない。権力者は選挙で決まるんだから、天皇の権威には左右されないでしょ。

 わしは承詔必謹の立場だから、天皇の願いを100パーセント叶えるべきだと思う。天皇の立場を経験した人間は他にいないのだから、そのあり方について一番わかっているのは天皇陛下。その陛下が「伝統とは何か」「象徴天皇はどうあるべきか」を考えられた結果が8月8日のお言葉ですよ。

 譲位によって皇位が不安定になるというけど、これは逆でしょう。今の不安定要因は、高齢化。もし天皇が認知症になってしまった場合、摂政を置くと、20年も30年も天皇が世の中に姿を見せないことになるかもしれない。つまり、20歳や30歳になるまで天皇を知らずに過ごす国民が出てくるわけ。そのほうが皇位の安定性が失われるよ。

八木:日本は伝統的に、天皇個人の意思で国が動くシステムは採っていない。それが近代になって立憲君主制という形になった。ところが8月8日のお言葉は個人の意思を述べられ、そこで具体的な制度変更を希望されました。これは憲法に抵触するので、政府は動けない。天皇陛下がテーマ設定をされたこと自体が、問題解決を困難にしている面があるわけです。水面下でご意向を示されて、政府が独自の提案理由で立法する形ならば良かったのだが。

小林:わしもそれを政府がやるべきだったと思う。でも内々に伝えてきたのを政府が無視したんだから、国民の前で思いを述べられる以外にやりようがない。政府が動かないから、ああいう手段を採らざるを得なかったんだよ。

 そもそも、天皇陛下が自由意思で発言するのはおかしくも何ともない。

八木:いや、それはダメでしょう。

小林:なんで? 発言自体は問題ないでしょ。権力側がそれを聞くかどうかを決めればいいんだから。

八木:天皇が国民統合の象徴であるためには、国民の間で賛否のある論争の渦中に立ってはいけない。賛成派と反対派に二分されてしまう。

小林:もちろん、原発推進か反対かみたいな議論で個人的な意見を言っちゃダメ。でも天皇制をいかに維持するかという問題は、公的な発言でしょ。自分の経験に基づいて、国民に議論を喚起するために話された。それを受けた国民の90%が退位を希望しているのだから、それに見合う法律を作ることに何の問題もない。