所功(京都産業大名誉教授)

大相撲を観戦に国技館を訪れられた天皇、皇后両陛下=2017年1月8日、両国国技館(今野顕撮影)
大相撲を観戦に国技館を訪れられた天皇、皇后両陛下=2017年1月8日、両国国技館(今野顕撮影)
 現在満83歳の今上陛下は、すでに7年前(76歳)から皇太子殿下(当時49歳)への「譲位」を決意され、そのご意思を昨年8月「お言葉」ビデオメッセージにより公表された。これ自体、異例のことながら、大きな意味をもっている。

 現に直接「お言葉」を視聴した一般国民の大多数(9割前後)が、「象徴としての務め」にこめられた深い思いを素直に理解し、譲位の御意向に賛意を示している。これが今上陛下に対する「国民の総意」だとみられる。

 政府は、数年前から陛下の御内意を伝え聞きながら、全く動かなかったが、昨年9月に「有識者会議」を立ちあげ、半年近く着実に検討を続けてきた。その論点整理が1月23日に報告されたが、政府も国会も具体的な法整備に向けて全力を尽くしていただきたい。

ヒアリングで私が強調したこと


 この有識者会議で行われたヒアリングの第1回(11月7日)に招かれた私は、持論を率直に述べた。その全容は、首相官邸のホームページに掲載されており、またそれに補注などを加筆した全文が私どものホームページ「かんせいPLAZA」(http://tokoroisao.jp/)に出してある。私の強調したことは次の一点に尽きる。

 それは、7月から急に広まった「生前退位」という表現を「高齢譲位」に改めて、その実現を可能にしてほしい、ということである。何となれば、陛下は、憲法の最も重要な第一章の第一条に「日本国の象徴であり、日本国民の象徴」と明記される天皇として、その「お務め」を高齢化の進行に伴い従来どおり「全身全霊」で自ら十分に為しえなくなると憂慮され、お元気なうちに「天皇としての責任と権限」を全て後継者に譲り渡すことで「象徴天皇の務めが常に途切れることなく、安定的に続いていくことをひとえに念じて」おられる。これは一般的な「生前退位」ではなく、個別的な「高齢譲位」以外の何物でもない。

 この一点さえ明確になれば、かつてあったような早く譲位して院政を行うとか、他から退位を迫られて政争になる等の余計な懸念は一切ないことが、誰にも理解されよう。