川上和久(国際医療福祉大学教授)

 第47回衆議院議員選挙が行われたのは、2014年(平成26年)12月14日。衆議院の任期は4年だが、解散があるため、これまでの衆議院の任期の平均は、約2年半にしかなっていない。だから、「衆議院の任期が2年を過ぎたら常在戦場、解散はいつでもあると思え」と永田町では言われている。今回の任期が満了するのは2018年(平成30年)12月だから、すでに2年を過ぎているが、今年の1月末現在、衆議院は解散されていない。

 昨年は、「安倍首相が解散総選挙に踏み切るのではないか」との憶測がしきりに喧伝された。夏に行われた参議院議員選挙とダブルではないか、との憶測もあったが、熊本大地震等で「ダブル選挙どころではない」との声が上がり、ダブル選挙は見送り。10月に入ると、二階俊博自民党幹事長が記者会見で、「選挙の風が吹いているか吹いてないかと言われれば、もう吹き始めている。これだけだんだん風が吹いてくると、今、準備に取りかからない人がいれば論外だ」と述べ、特に当選回数が少ない代議士に対して、選挙の準備を急ぐべきだとハッパをかけた。

 この時期は、ロシアのプーチン大統領の来日を控え、「北方領土返還交渉に進展があるのではないか」との期待が高まって、12月の日露首脳会談の成果を掲げて「北方領土解散」に踏み切るのではないか、などとも言われた。

 しかし、一説には日本のメディア報道で疑心暗鬼になったともいわれているが、プーチン大統領はその後態度を硬化させ、北方領土返還交渉どころか、むしろ、対露経済協力の「食い逃げ」批判などが高まる結果となり、日露首脳会談の成果を掲げての解散総選挙のタイミングも逸した。
ロシアのプーチン大統領(左)を出迎える安倍首相=平成28年12月、山口県長門市(代表撮影)
ロシアのプーチン大統領(左)を出迎える安倍首相=平成28年12月、山口県長門市(代表撮影)
 衆議院の任期満了まであと2年を切った段階で、近々の解散総選挙はあるのだろうか。いくつかの国内事情から、解散総選挙は遠のきつつある、というのが私の見立てだ。外交安全保障や経済情勢の急激な変化などの外的要因は措くとして、ドメスティックな事情に絞ると、いくつか理由がある。

 第一は、2014年の衆院選で自公が獲得した議席を維持できる見通しが必ずしも立たないこと。自民党は、選挙前の295議席から、追加公認の1名を合わせて291議席と4議席減らしたが、選挙前の31議席から35議席へと議席を4つ増やした公明党と合わせれば、326議席。無所属や保守系政党を入れなくとも、衆議院での議席の占有率は68.6%と3分の2を上回っている。

 憲法改正への道筋は容易ではないものの、改憲勢力が3分の2を下回れば、どういう形でやるにせよ、安倍政権下での憲法改正の可能性がなくなってしまう。憲法改正の発議の可能性を残すためにも、リスクを負わない、ということがありえる。