三浦九段の師匠 5月の理事選を前に蠢く派閥争いの内幕語る

『NEWSポストセブン』 週刊ポスト2017年2月10日号

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 将棋界のトップ棋士の一人である三浦弘行九段による前代未聞の“カンニング疑惑”は、第三者委員会が「不正の証拠なし」の結論を下し、日本将棋連盟の谷川浩司会長が辞任する事態に発展した。

 公益社団法人である日本将棋連盟は谷川会長を含む8人の常勤理事を中心に運営されている。年明け早々に谷川会長と島常務理事が辞意表明したことで、2月6日に後任を決める臨時棋士総会が開催される。次期会長は、棋士会長を務めている佐藤康光永世棋聖が有力だ。渦中の三浦九段の師匠である西村一義九段は後任人事をこう評す。

 「谷川会長は、20歳の時から将棋界のトップにいて、現在は永世名人ですから、棋士の中で絶大な信頼がある。(兵庫県神戸市出身で)大阪でみんなで飲みに行く時は黙ってお金を出して、それでいて威張らないから尊敬される。

 しかし、これが組織の長として向いているかは別問題。今回の事件もそういった背景から起きた。(後任に名前の挙がる)佐藤さんは棋士としての実績は谷川会長の半分以下でしょうが、人柄はものすごくいい。リーダーとしては向いているんじゃないか」
将棋会館=東京都渋谷区
 折しも連盟は5月に開かれる定例棋士総会で、2年に一度の理事改選も控えている。西村九段は「残りの理事も全員職を辞すべき」とも語った。谷川会長と島常務理事の辞任だけでは足りないという主張である。

 「ただ、常務理事のなかにも辞めたくない人がいて、(理事の中でも)意見がバラバラなんでしょう」

 将棋連盟の理事は棋士総会で選任されるが、実際には総会に先立って行なわれる「予備選挙」でその人選が決まる。投票権を持ち、理事に立候補できるのは連盟の正会員(棋士及び女流棋士ら)の232人だ。現職棋士が理事として連盟を運営する現状には無理があるのではないかと西村九段に問うと、こんな答えが返ってきた。

 実は、連盟の運営に疑問を抱く棋士は少なくない。1月23日に開かれた連盟から棋士への月例報告会では、今回の騒動への対応に、棋士側から批判が相次いだ。財テク棋士として知られる桐谷広人七段はこういう。
内紛の様相を呈してきた将棋連盟

 「昔の連盟は棋士のことを一番に考えていましたが、今は違う。モチ代、氷代がなくなったりして浮いた金が、今回の第三者委の費用や三浦九段への補償で消えていくわけですから、全く無駄なことばかりやっている。そりゃ総辞職を求める声が出てくるのは当然ですよ」

 ただ、西村九段の告発については首を傾げる。

 「西村さんは米長会長体制を支えた人だが、連盟が今のようにおかしくなったのは米長会長時代からのことです。それまでは弱い棋士に救済を施し、将棋に精進できるようにしていた。それが理事の差配できる金ばかり増えた。現体制はその流れをくんでいる。

 西村さんは月例報告会でも発言し、正論を述べていたと思います。ただ、今回は弟子である三浦をかばうという気持ちがもちろんあるのでしょうが、それに加えて前回の理事選で落ちたことが、現体制への批判につながっているんじゃないか」

 そうした見方もあるなかで、西村九段が今回の騒動を経た5月の理事選で、再び理事に復帰しようと立候補する可能性はないのか。西村九段はこう答える。

 「いやいや年齢的なこともありますから……。2年前は落ちましたが、過去には10期以上、一度も落ちたことがない。それ(=前回の落選)には色々なことがあったと思う。私は専務理事として米長前会長を支えてきましたが、棋士に対して厳しく対処してきたから恨まれている面がある。理事選は敵も味方もいない候補者のほうが当選する。自分の言葉でものをいわない人のほうが有利。まあ今は5月の総会に向けて各派閥で理事候補者を探している状態。水面下の戦いでしょう」

 会員である棋士たちから厳しい批判を現執行部はどう受け止めるのか。連盟に取材を申し込んだが、「回答は控える」(広報担当者)とするのみだった。内紛の様相を呈してきた将棋連盟。今回の騒動の本当のヤマ場はまだこの先にありそうだ。


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