世界が注目する6年後の祭典で、東京は何を伝えるべきなのか。作家の乙武洋匡さんに聞いた。

乙武洋匡さん
 パラリンピックをなくしたいと思っています。障害のあるアスリートが活躍できる舞台をなくすべきと言っているのではなく、オリンピックとパラリンピックを一つの大会として開催できたらいいという考えです。

 現状を考えると、荒唐無稽だと言う人もいるでしょうが、そこまで無理な話だとは思っていません。例えば、柔道が体重別に階級が分けられているのは、体重差というハンディキャップをなくすため。それと同じで、身体障害や視覚障害などの身体機能ごとに階級を分けて競技すればいい。今すぐに実現するとは思いませんが、少なくとも6年後の東京では何ができるのか模索することは大切です。

 東京は、戦後復興から世界4位の都市になりました。今後、都市間競争の時代に何に価値を置いて都市の魅力を高めていくのか。これまでは、経済力に価値を置いてきましたが、そこは維持しつつも、別の魅力を高める努力をしなければならないと思います。

 その一つが「ダイバーシティ(多様性)」です。ほかの都市と比べて、東京はこれが決定的に足りていないと感じています。

ーーでは、乙武さんにとって、多様性のある都市とは。

 僕が好きな都市の一つに、タイのバンコクがあります。確かに、バリアフリーの整備は遅れていて、車椅子ユーザーの私にとって便利な都市では決してありません。でも、居心地の良さを感じました。

 例えば、バンコクではLGBT(レズビアン、ゲイ、バイ・セクシャル、トランスジェンダー)の方々への寛容さがあります。ニューヨークやシンガポールのような多国籍都市ではないけれども、障害者や外国人を含めて、いろんな違いを持った人たちも受け入れる懐の深さ、安心感がバンコクにはありました。

ーー2020年の東京オリンピック・パラリンピックでは、世界中から多くの人たちが東京に集まる。東京が世界に伝えるべきメッセージとは。

 例えば、オリンピックとパラリンピックの開会式と閉会式を同時に開催する、マラソンだけ同一競技にするなど世界に向けてアドバルーンを揚げることは大切です。

 ただ、本当の意味での多様性を持った都市にするには、障害者や外国人、同性愛者などマイノリティを受け入れる制度、環境づくりが求められます。どう整えていくのか、それがこの6年間の課題になるでしょう。

ーー特に、オリンピックでは、過度な商業主義的な方向性が指摘される。これからのオリンピックやパラリンピックが歩むべき姿とは。

 成熟型が期待されたロンドンは、英国が重ねてきた歴史と伝統を見せつけた大会でした。2016年のブラジル・リオデジャネイロは、経済成長を証明する大会にするそうです。でも、東京は1964年に達成していて、その段階にありません。ならば、日本は何を示す大会とするのか。

 批判を浴びることを承知の上でのアイデアですが、開会式を数十年前のオリンピックのように、入場行進と聖火台点火、開会宣言に限るシンプルな形に戻すのもコンセプトの一つだと思います。超高齢化、人口減少という課題を抱える先進国は、先を行く日本に注目しています。そこで「スケールダウンする覚悟」を見せる。結果、小さな国も開催国として立候補しやすくなるでしょう。

 東京が勇気を持って新しいオリンピックの姿を示せれば、50年後や100年後に「東京での開催がオリンピックの分水嶺だった」「東京、グッドジョブだ」と言われるようになるかもしれません。

乙武 洋匡(Hirotada Ototake)
作家。1976年、東京生まれ。早稲田大学在学中、『五体不満足』(講談社)が大ベストセラーに。スポーツライターとして活躍した後、東京都新宿区教育委員会非常勤職員や杉並区小学校教諭を歴任。2013年3月から東京都教育委員。