藤田孝典(NPOほっとプラス代表理事 聖学院大学人間福祉学部客員准教授)

 生活保護ケースワーカーの仕事は、まず担当する生活保護世帯と信頼関係を築き、自立助長のためにパートナーとして、支援に関わらせてもらうことだ。これは、相談援助の基本である。その基本を見失い、生活保護利用者を萎縮させ、信頼関係を損ないかねないジャンパーを着用して業務にあたっていた小田原市の事件は、言語道断である。

 「不正受給はクズである」との文言にも見られるように、実際の支援にあたるケースワーカーのあいだにも不正受給に対する誤解と偏見が広がっている。わたしはソーシャルワーカーとして実際に生活困窮者の支援にあたっているが、現場から見えてくる不正受給の実態は、一般的にイメージされる不正受給とはかなり乖離している。社会に広がる誤解と偏見を解いていきたい。

不適切な文言をプリントしたジャンパーについて説明する 神奈川県小田原市の幹部職員=1月17日、小田原市役所
不適切な文言をプリントしたジャンパーについて説明する 神奈川県小田原市の幹部職員=1月17日、小田原市役所 


 


「不正受給」の意味


 生活保護の不正受給件数は、全体の約2%程度であるが、相変わらずもっと多いのではないかと報道されることもある。私はこの約2%程度であるという厚生労働省の報告にも疑いを持っており、本当はさらに相当少ないはずであると考える。

 この不正受給の議論をする際に、私たちは生活保護の不正受給とは何を指すのか、明確にしておかなければならない。生活保護の不正受給とは、福祉事務所が生活保護法第78条に該当したと判断して決定したものである。

第七十八条  不実の申請その他不正な手段により保護を受け、又は他人をして受けさせた者があるときは、保護費を支弁した都道府県又は市町村の長は、その費用の全部又は一部を、その者から徴収することができる。

 ここでいう「不実の申請その他不正な手段により保護を受け」という文言は、本人が故意に福祉事務所を騙すことがないと成立しない。本人に騙す意図があったのか否か、立証責任は処分庁である福祉事務所にある。

 生活保護受給者の多くは、生活保護制度のことを知らなかったり、申告を忘れてしまう場合がある。収入の未申告や報告漏れを故意で意図的に行うことよりも、過失による報告忘れや制度の理解不足が背景にある。ましてや、生活保護を受給している人々の大半は、高齢者や障害者、傷病者であり、生活保護に関する様々な事務作業が1人で十分に処理できるとも限らない。

 そのため、申告も含めた生活支援をすることがケースワーカー(福祉事務所職員)に求められるのである。だから、生活支援をするなかで、未申告の収入が見つかった場合、故意でないと主張しているのであれば、普通に返還を求めればよく、不正受給として扱うには適切ではないケースが大半である。

 この普通返還は生活保護法第63条に規定されている。

第六十三条  被保護者が、急迫の場合等において資力があるにもかかわらず、保護を受けたときは、保護に要する費用を支弁した都道府県又は市町村に対して、すみやかに、その受けた保護金品に相当する金額の範囲内において保護の実施機関の定める額を返還しなければならない。