高千穂遙(作家)

 「聲の形」「この世界の片隅に」「君の名は。」などのアニメ映画作品のヒットに熱い視線が注がれているという声を聞く。
昨年8月に公開された「君の名は。」は邦画歴代2位の興行成績240億円を記録。いまだに上映が続いている(C)2016「君の名は。」製作委員会
昨年8月に公開された「君の名は。」は邦画歴代2位の興行成績240億円を記録
(C)2016「君の名は。」製作委員会
 しかし、実は邦画アニメはこれまでも堅実なヒットを毎年つづけてきたのだ。昨年から今年にかけても、前記三作品のほかに、定番となっているアニメ映画、「名探偵コナン」、「ワンピース」、「妖怪ウォッチ」、「ポケモン」は、他の実写邦画作品をしのぐ興行成績をしっかりとあげている。「ドラえもん」、「クレヨンしんちゃん」もそうだ。公開されれば、間違いなくヒットする。なので、いまの状況はとくに目新しいものではない。邦画アニメ作品は、もともと好調を維持していた。

 では、なぜいまこの三作品がとくに話題となっているのだろう? 理由はタイトルごとに異なっている。「聲の形」は重いテーマ性が、「この世界の片隅に」はアニメにまったく興味を示さなかった世代を含む広い観客層の動員が、「君の名は。」は高い作画の質と記録的な興行収入が、それぞれ耳目を集め、ニュースやワイドショー、一般週刊誌等の大衆の目に触れやすいメディアに多くとりあげられた。そして、記事やテレビでの特集が普遍的な話題となり、いわゆるアニメファン以外の人たちのもとに情報が届いていった。

 この三作品は、たまたま同じようなタイミングで公開された。狙って重なったわけではない。企画が生まれてから完成するまでの時間が三作ともまったく異なっている。これはめぐりあわせの妙だ。こういう偶然が起きるということに関しては、ついつい目に見えない何ものかの意志を感じてしまったりするが、もちろんそんなことはない。

 アニメ映画は、どんなにヒットしても今回のような形でメディアに紹介されることはほとんどなかった。おおむね黙殺されてきた。作品の内容や質が論じられることもまれだった。コナンやワンピースを見ていれば、よくわかる。メディアはそういった作品のヒットには関心を持たない。例外はジブリアニメだったが、その例外が昨今は非ジブリアニメにも波及するようになった。現在起きている現象は、要するにそれである。

 また、作品のヒットに関してはツイッターやフェイスブックといったソーシャルネットワークサービス(SNS)が果たした役割も見逃してはいけない。今回の三作品は、質的にも非常にすぐれていた。そのことがSNSで口コミ情報として流れ、それにより、ふだんはアニメ映画を見ない人たちをも動かすことにつながった。そしてなにより、三作品はどれも映画オリジナルタイトルであった。コナン、ワンピース、妖怪ウォッチ、ポケモンとは異なり、テレビで放送されている番組から派生した作品ではない。ここ、相当に重要だ。