英国の映画製作・配給会社「サードウィンドウフィルムズ」代表、アダム・トレル氏(33)と先日話す機会があった。アダム氏は日本をはじめアジア映画を海外に紹介しており、現在公開中の日本映画「下衆(げす)の愛」(内田英治監督)のプロデューサーも務めている。

「日本映画が嫌いになってきた」と熱弁するアダム・トレル氏
=東京・渋谷(伊藤徳裕撮影)
 「日本映画のレベルは本当に低い。最近すごく嫌いになってきたよ!」

 アダム氏は憤っていた。断っておくが、アダム氏は日本映画をこよなく愛している。だからこその“苦言”なのだろう。

 「アジア映画の中で韓国や中国とかが頑張っている。それに比べて日本はレベルがどんどん下がっている。以前はアジアの中で日本の評価が一番高かったけど、今では韓国、中国、台湾やタイなどにお株を奪われている。ちょっとやばいよ」

 「下衆の愛」を手がけたのも「好きな日本映画があまりなくて海外配給が大変になってきた。それじゃ自分がプロデューサーになろうと思った」という動機からだ。

 「日本映画の大作、例えば『進撃の巨人』はアメリカのテレビドラマっぽくてすごくレベルが低い。何でみんな恥ずかしくないの?」と一刀両断。最近目立って量産されているコミックが原作の恋愛映画についても「ハーッ」と大きなため息をついた。日本で主流になっている「製作委員会方式」に不満があるようだ。リスクの分散・回避のために複数のスポンサー企業が製作費を出資するシステムだ。

 「日本では映画は製作委員会のもので監督のじゃない。例えば、誰が監督したかみんなほとんど知らないでしょ。監督の名前を宣伝しない。英国などでは出演者には興味がない。『この映画はマイク・リーの新作』などと監督を重視する。日本では、例えば園子温(その・しおん)監督の『新宿スワン』を誰が撮ったかは95%の人々は知らない。監督は製作委員会のパペット(操り人形)なんだ」

 ロンドン生まれのアダム氏は、22歳のときにサードウィンドウフィルムズを立ち上げた。「自分の好きな監督のオリジナル作品を海外に宣伝して配給したり、映画祭に出したりしている。海外でその監督が人気になったら、次作をプロデュースする。例えば園子温。『愛のむきだし』や『冷たい熱帯魚』とかを配給して『希望の国』をプロデュースした。藤田容介監督の『全然大丈夫』と彼の短編映画も海外に配給したらすごい人気があった」。女性お笑いトリオ「森三中」の大島美幸が男役を好演し、海外映画祭で主演女優賞を受賞した同監督の「福福荘の福ちゃん」もプロデュースしている。