岩田温(政治学者)

 安倍内閣の独走状態が続いている。当分、「一強多弱」という状態が続くだろう。だが、まことに興味深いのは、国民の多くが安倍内閣を積極的に支持しているわけではない点だ。すなわち、何かを成し遂げてくれるという期待感から安倍内閣を支持するのではなく、他の野党では政権を担えないだろうという絶望感から、国民は消極的に安倍内閣を支持しているのである。

 私の友人に労働組合に所属している会社員がいる。過去、選挙で自民党の候補者に殆ど投票したことがない。だが、現在の段階で解散総選挙になれば、自民党に投票しようと思っているという。理由を尋ねると「野党では頼りないから」との一言であった。何か積極的に支持する魅力があるわけではないが、他の選択肢が余りにも酷いので、支持せざるを得ない。それが安倍内閣を支持する人々の本音なのかもしれない。皮肉な話だが、民進党の迷走こそが、安倍内閣の基盤となっているということだ。
衆院予算委員会で、民進党の辻元清美氏(左)の質問に答弁する安倍晋三首相。右奥は稲田朋美防衛相=2月14日午前、国会・衆院第1委員室(斎藤良雄撮影)
衆院予算委員会で、民進党の辻元清美氏(左)の質問に答弁する安倍晋三首相。右奥は稲田朋美防衛相=2月14日午前、国会・衆院第1委員室(斎藤良雄撮影)
 確かに民進党の迷走は目に余るものがある。「我々の立場は背水の陣ではない。もう水中に沈んでいる」と当の民進党の野田佳彦幹事長が述べている通り、民進党はもはや瀕死の状態にあるといっても過言ではあるまい。民進党の決定的な誤りは、安倍内閣の進めようとした平和安全法制に無理矢理な理由で反対したことだった。自衛隊を違憲だと考えるような過激な法学者や共産党と連携して、平和・安全法制が「立憲主義」を破壊する暴挙だと非難したことが間違っていたのである。

 「合憲」か「違憲」かという「白」か「黒」かと突きつけるような議論をしてしまったら、議論によって妥協点を模索することは不可能になる。政権を担うことが不可能な共産党の国会議員が何を騒ごうとも、不可解な騒音だと聞き流しておけばよい話だが、政権与党を目指す野党第一党が、こうした原理主義的な反対運動を展開したのが間違いだった。

 例えば、枝野幸男氏は、集団的自衛権に関して、今、読み返してみれば恥ずかしくなるような発言をしていた。「世界の警察をやるような軍隊をつくるには、志願制では困難というのが世界の常識だ。従って集団的自衛権を積極行使するようになれば、必然的に徴兵制にいかざるを得ないと思う。」(2014年05月18日『朝日新聞』より)

 平和安全法制は施行されたが、当然のことながら、日本で徴兵制など導入されていないし、徴兵制を導入すべきだという声すら聞かない。余りに極端な発言で、国民の恐怖心を煽り立てるような発言だったと言わざるをえないだろう。

 混迷を極める民進党は、帆を失った難破船のように、一体どこに向おうとしているのか、全く見えてこない。民進党の混乱を象徴しているのが、共産党とをも含む野党共闘に対する姿勢だろう。

 一体、どのような形で連携しようとしているのか、さっぱり理解できないのだ。