澁谷 司(拓殖大学海外事情研究所教授、日本戦略研究フォーラム政策提言委員)


 今年(2017年)2月13日午前8時頃、北朝鮮の最高指導者、金正恩委員長の異母兄弟、金正男がクアラルンプール第2国際空港で北朝鮮工作員によって毒殺されたという(ただし、北の工作員による直接犯行かどうかは断定できない)。

 1人の正体不明の女が、突然、金正男の顔にスプレーをかけ、その後、液体を含んだハンカチを正男の口に押し込んだ(ハンカチを正男の頭にかけたという説もある。他方、毒針を使用したか否かは分からない)。そして、その女は、もう1人の女と現場からすぐに逃亡した。

平壌の錦繡山太陽宮殿を訪問する北朝鮮の金正恩朝鮮労働党委員長(前列中央)。朝鮮中央通信が配信した=2月16日(ロイター)
平壌の錦繡山太陽宮殿を訪問する北朝鮮の金正恩
朝鮮労働党委員長(前列中央)。朝鮮中央通信が
配信した=2月16日(ロイター)
 金正男は両目が痛いと、空港カウンターの職員に助けを求めた。しかし、その後、正男は市内の病院へ運ばれる途中に死亡している。

 金正男は2月6日、居住地のマカオからマレーシアへやって来た。そして、13日午前10時30分のマカオ行き便の搭乗をロビーで待っていたのである。

 マレーシア警察は、その2人の女の身柄を拘束したという。だが、北朝鮮の工作員と見られる4人の男らが、彼女達に金正男殺害の実行を依頼した可能性がある。

 『東網―東方日報』電子版(2017年2月15日付)によれば、金正男に関する情報は、以下の通りである。

 金正男には、マレーシアにも愛人がいたという。そこで、正男は同国へ足しげく通うようになった(ひょっとすると、金正男は、北朝鮮の女性スパイの美人局に嵌って、マレーシアで殺害されたのかもしれない)。

 実は、北朝鮮とマレーシアの間では、ビザなしで出入国できる。そのため、しばしば北朝鮮高官はマレーシア経由で亡命する。だが、一方では、北朝鮮のスパイもマレーシアに入国しやすい。

 2014年1月、金正男はクアラルンプールの韓国系ホテルに現れた。その後も、正男はシンガポールとマレーシアの高級ホテルにしばしば出没している。

 金正男は、弟の正恩が北朝鮮のトップになって以降、自分の身の安全に脅威を感じていたという。最近、正男は、逃亡を計画していたという。