小島伸之(上越教育大学准教授)


 2017年2月12日、「宇宙キターっ!」の「仮面ライダーフォーゼ」(テレビ朝日)のヒロイン役でブレイクし、映画「HK変態仮面」、NHK朝ドラ「まれ」などで人気を博した若手女優の清水富美加が芸能界を「引退」し幸福の科学へ「出家」するとの報道がなされた。

 清水富美加「出家」報道においてもすでに明らかになっているが、幸福の科学の「出家」は教団の専従職員となることを意味し、世俗社会を主とした生活を捨てるわけではなく、家族との断絶を意味するわけでもない。
おどけた様子を見せる清水富美加さん=2015年10月
おどけた様子を見せる清水富美加さん=2015年10月
 これは幸福の科学独自の例ではなく、念法眞教(創設者:小倉霊現、1928年前身組織設立)など、教団の専従職員を「出家者」と呼ぶ教団は他にもある。同様に教団への「出家」が社会的問題となった、かつてのイエスの方舟(創設者:千石イエス、1960年前身組織設立)や統一教会(現家庭連合、創設者:文鮮明、1954年設立)やオウム真理教(創設者:麻原彰晃、1984年前身組織設立)の例は、諸教団への入信に伴って家族との関係断絶が生じたことに対し、親が「子供を返せ!」と教団に抗議をしたものであって、今回の清水の「出家」騒動とは性格を異にする。

 そもそも原始仏教において、出家とは文字通り家を離れ、家族への執着や愛を捨てることであった。真偽は不明であるが、報道の通り清水が「家族(父)のために出家」したのであれば、それは原始仏教の「出家」概念からは説明しがたいことが生じたことになる。

 もっとも、日本においては明治以降、伝統仏教諸宗においてすら出家概念の本質は打ち捨てられ、僧侶(出家者)ですら家族を持つことが一般的となっている。こうした状況を自明視してよいのか否かという点は、仏教論的には深められざる大論点である。清水の「出家」後の芸能活動継続についても、天台宗に出家した後も文化人・タレントとしてメディアに登場する瀬戸内寂聴などの先例と比して出家論的にどうとらえるべきか、ということを考えさせられる。

 清水は幸福の科学の二世信者(両親が信者、清水は6歳で正式入信)であり、「出家」報道に先立って1月19日には幸福の科学公式サイトで清水富美加の「守護霊」インタビュー動画が公開、2月3日には『女優・清水富美加の可能性―守護霊インタビュー』(幸福の科学出版)が発売されていた。

 幸福の科学における「守護霊」は、神が人間につけた「魂の教師」とされる。幸福の科学の「守護霊」インタビューは、「守護霊」が守護する本人(この場合は清水富美加)は介さず、幸福の科学総裁大川隆法(本名:中川隆)が「守護霊」を呼び出し、大川総裁の口を通じて語る形で行われる。清水の「守護霊」インタビューでは、清水の「前世」(の一つ)が「ベガ星人」であることが匂わされ、「三国志時代の過去世」についても語られている。

 こうした「前世」の存在は、幸福の科学の教義に基づくものである。幸福の科学の世界観によれば、宇宙(世界)はわれわれの生きるこの世界(三次元世界)だけではなく、多元的に存在しており(一次元から一四次元)、人は本来四次元から九次元のいずれか世界の住人で、われわれの生きる三次元世界は四次元から九次元までの人々が転生してくる「修行の場」である。