寺薗淳也(会津大准教授、「月探査情報ステーション」編集長)

 ロマンあふれる発表…科学者として、私自身曖昧な言葉である「ロマン」という言葉はあまり使いたくないのだが、今回の発表に、一人の人間として改めて宇宙への憧れ、ロマンをかき立てられることになった。今回、NASAが発表した太陽系外惑星(系外惑星)についての発表は、これまで数多く行われてきた系外惑星に関する発表の中でも最大級の衝撃を持つものといってよいであろう。

 ことによっては、この発表が、人類の歴史にとって長く記憶されることになるものになる可能性も十分にある。

 今回のNASAの発表のキーワードには、3つの重要なポイントが隠されている。「赤色矮(わい)星」「ハビタブルゾーン」、そして「地球型惑星」である。この3つのキーワードを手がかりに、今回の発見の重要性を探ることにしよう。

宇宙でありふれた「赤色矮星」


 まず最初に出てくる言葉が、あまり耳慣れない言葉「赤色矮星」である。「矮星」という言葉は小さい恒星を指すものである。私たちがよく聞く言葉として、「白色矮星」がある。これは、太陽サイズの恒星がその寿命の最後に達する構成である。太陽は数十億年後には寿命を迎える。そのとき、太陽は大きく膨張し、周囲のガスは太陽系全体へと流れ出す。そして中心に残るのは、小さく白く輝く恒星「白色矮星」である。

 しかし、赤色矮星はそのような星の最後の姿ではない。単にサイズが小さく、赤く輝いている星である。
 星が出すエネルギーは、その大きさでだいたい決まる。大きい恒星は通常多くのエネルギーを放つため、表面温度が高く、白く輝く。それに対して、小さい恒星が出すエネルギーは少ないため、表面の温度が低く、赤く輝くことになる。恒星の大きさはさまざまであり、小さい恒星が存在してもよい。このような、小さく輝く恒星が赤色矮星である。

 今回の発見の舞台となった赤色矮星「トラピスト1」を中心とした系外惑星系は、地球から39光年離れたところにあり、中心星の大きさは質量にして太陽のわずか0.08倍、木星より少しだけ大きいサイズと考えられている。恒星としてはまさに「極めて小さい」という言葉がぴったりである。

 赤色矮星は、放出するエネルギーが少ないため非常に寿命が長い。多くのエネルギーを出す大きな恒星は、まるで浪費を止められないお金持ちのようにそのエネルギーを急速に使い、最後は超新星となって爆発するという運命をたどる。それに対し、赤色矮星は自らのエネルギーを細々と使い、数十億年以上、あるいは場合によっては宇宙の寿命に匹敵するほどの長い寿命を持つとされている。

 また、赤色矮星は小さい分、宇宙における数が多いとされている。実際、赤色矮星は宇宙で最も多い恒星のタイプとされている。にもかかわらず、私たちがそれほど多くその姿を見つけることができないのは、ひとえに赤色矮星が出すエネルギー量が少ないためである。星が放つエネルギー量が少ないということは、私たちに届くエネルギーも少ないということであり、望遠鏡で発見できる可能性も少ないということである。

 今回の赤色矮星は幸いにして39光年という「近い」距離にあったため発見できたが、宇宙には同じような赤色矮星が、私たちに見つけられることもなく「星の数ほど」あることが考えられる。実際、今回の赤色矮星は、銀河系内で最もありふれた恒星のタイプだとのことである。

 つまり、このようなありふれた存在である赤色矮星に地球のような惑星が発見されたということは、このような組み合わせ、すなわち惑星を持つ赤色矮星(それも地球サイズの惑星を持つもの)もありふれた存在であるということを示唆するものである。

 将来さらに技術が進めば、今回のトラピスト1のような赤色矮星と系外惑星の組み合わせがさらに多数発見され、今回と同じように生命が存在する可能性を秘めた惑星もみつけられることが期待できる。