若林亜紀(ジャーナリスト)

 今、国会で共謀罪についての論議が深まり、構成条件を厳しくした「テロ等準備罪」に名を変えて審議が行われている。金田勝年法務大臣は同法案について「国際組織犯罪防止条約の締結に伴って必要となる法整備である」と述べ、条約の目的を離れた意図はないことを明言した。

 実は、「テロ等準備罪」の成立を待つ条約がもう一つある。国連腐敗防止条約である。これは国際組織犯罪防止条約の関連条約として、2003年の国連総会で採択された。日本では、小泉内閣時の2006年の国会で、川口外相のもと、当時外務副大臣であった金田現法相が趣旨説明をし、与野党の全会一致で署名(調印)が認められた。
国連総会=ニューヨーク(国連提供、共同)
国連総会=ニューヨーク(国連提供、共同)
 だが、正式な条約締結のためには共謀罪の整備が必要とされ、国際組織犯罪防止条約とともに未締結のままとなっている。

 その間世界の181の国と地域が次々と締結し、2016年末で未締結の国は日本、北朝鮮、シリアぐらいとなってしまった。日本はトランスペアレンシー・インターナショナルの腐敗認識指数(CPI)では清廉度が世界で20位と高いながら、腐敗防止法制の点では世界から大きく遅れ、孤立している。その結果、国際的な腐敗防止網の抜け穴となってしまっている。2012年には、日本の地方銀行がテロや麻薬絡みの巨額の国際マネーロンダリング(資金洗浄)事件に利用されていたことが露見し、アメリカから強い非難を受けた。とばっちりで日本の金融機関が一律に銀行間の国際送金網から外される恐れも一時あった。

 私はジャーナリストの仕事の延長で、腐敗をなくす国際NGOトランスペアレンシー・インターナショナルの日本代表を務めている。その観点からも、「テロ等準備罪」の成立と国連腐敗防止条約の締結を強く望む。

 まず、腐敗防止の国際法制と条約の特徴を挙げよう。腐敗防止の国際条約としては他に、OECD外国公務員贈賄防止条約というものがある。これは、1997年にOECD(経済協力開発機構)で採択された、国際ビジネスにおいて相手国の公務員にワイロを送らないという条約である。日本も締結しているが、締結国は41カ国しかない。

 国連腐敗防止条約というのは、2003年に国連総会で採択されたより包括的な条約である。①官民の透明性を高め、腐敗防止の公的機関を設立する。また、民間の腐敗防止団体の運営も奨励する。②外国公務員への贈賄だけでなく、自国公務員をも含めた公務員の贈収賄を禁じる③犯罪者の引き渡しや捜査・司法の国際協力④資金洗浄の防止と犯罪収益の没収、当該国への返還⑤日本では禁じられていない、民間企業間での贈収賄も違法とする、などを内容とする。

 役所や企業にとっては厳しい法律だが、日本にもたらすメリットも大きい。