藤本貴之(東洋大学准教授/メディア学者)


ネットメディアは芸能人にとって「諸刃の剣」


 テレビやラジオの番組、あるいは芸能人のブログやSNS記事の一部に言及するだけで、取材をすることなく生産されるいわゆる「芸能コピペ記事」がネットメディアで散見される。

 取材されることのない二次情報による記事が、「コピペ記者」の極めて安価な作業として量産されるという意味では、WELQ騒動に端を発する「キュレーションメディア問題」などとも抱えている病巣は基本的に同じだ。拡散性と検索性を高めることだけでアクセス数を伸ばす、というビジネスモデルも同一である。

DeNAが運営していた医療情報サイト「WELQ(ウェルク)」。
トップページには全記事非公開化のお知らせが掲載されていた=1月5日
DeNAが運営していた医療情報サイト「WELQ(ウェルク)」。 トップページには全記事非公開化のお知らせが掲載されていた=1月5日
 「にわかアルバイト記者・編集者」が薄利で量産したコピペ記事が、「釣りタイトル」や「過剰キャッチ」によって大きなPV(ページビュー:アクセス数)を獲得し、情報として一人歩きをし、事実化してしまう。この問題は、今日のネットメディアのあり方として批判されている面のひとつだ。いわば「芸能コピペ記事」とは、メディアの現在を映す鏡とも言えよう。

 一方で、今日のコンテンツ(=芸能人など)が、コピペ記事を含めたネットメディアと「持ちつ持たれつ」の関係で成立していることも事実である。ネットメディアがなければ、成立しえないコンテンツ(=芸能人)は多い。

 例えば、多くのコンテンツ(=芸能人)は、今日、日常的且つ継続的にネットの拡散力や利便性を利用して、様々な形で効率的な情報発信をしている。むしろ、ネットを利用しないコンテンツなどないと言っても過言ではない。その意味では、ちょっとしたブログ記事や普段の出演番組などがネットニュースになることは、タレントとしては決してマイナスではない。ネットメディアの機動性を活かせば、テレビや新聞のような既存メディアでは取り上げることの難しい些細なことでも、切り口によっては素早くニュースにすることができる。コンテンツにとってこのメリットは大きい。

 しかし、それが逆に自分への批判やネガティブ情報として生成されてしまった場合は、その発信力はマイナス方向にいかんなく発揮される。一部の情報だけを抽出されて中傷されたり、根拠の薄弱な憶測が事実のごとく報じられる。それはSNSなどを介して無限に拡散され、一人歩きをし、もはや収拾がつかなくなり、ひいては既存メディアの報道や世論をも動かしてしまう。

 ネットメディアは、PVが収益に直結する構造であるため、マイナス情報だろうがプラス情報だろうが、ミスクリック(誤操作)だろうが、「アクセスされれば何でも良い」が基本にある。芸能市場とのしがらみも少ないだけに、コンテンツ(=芸能人)の味方であるとも限らないし、自制も効きづらい。ネットメディアは今日の芸能人にとって、最大の武器でもあり、最強の敵でもあるわけだ。