小林信也(作家・スポーツライター)

 侍ジャパン、大丈夫か? 強化試合を見て、ファンの間に不安が広がっている。ソフトバンクに敗れ、台湾に大敗した。台湾との第二戦には快勝したものの、阪神にも負けた。結果以上に、世界を制覇してくれるチームの勢いを感じない。

 一体何が問題なのか。

 端的に言って、侍ジャパンの面々は、ジャパンのユニフォームを着て、楽しそうに野球をやっていない! それが何よりの問題だ。

 侍ジャパンには、「WBCに優勝して、落ち目の野球人気復活の起爆剤になる」期待がかかっている、と関係者も選手も余計な責任感に縛られているのではないか。それは大きな勘違いだ。優勝すればフィーバーする、メディアも取り上げ、一般大衆の関心は高まる。だが、野球人気を高める本質は「優勝」ではなく、「野球って楽しいなあ」と、理屈抜きに魅了することだ。ムッツリした顔で、結果を求めて結果の出ない選手たちの姿には魅力がない。人を惹きつける華やかさもない。たとえ三振しても見る者の心を揺さぶるような、豪快で、人間的なプレーがほとんどない。

WBC日本代表侍ジャパン対台湾プロ野球選抜、ベンチ前でタッチをする侍ジャパン・菊池涼介=2月28日、ヤフオクドーム福岡
WBC日本代表侍ジャパン対台湾プロ野球選抜、ベンチ前でタッチをする侍ジャパン・菊池涼介=2月28日、ヤフオクドーム福岡
 投打の戦力分析以前の問題だ。チームとしてのダイナミズムを感じない。野球は個人プレーの集積と言われるゲームだ。1+1が2でなく3にも5にもなるような、化学反応、相乗効果があってチームは強さを発揮する。

 そのために、監督は見えないところで様々な配慮をし、選手個々の力を超えた潜在力が大きく膨らむような仕掛けをめぐらす。いまのところ、侍ジャパンにはそのようなエネルギーを感じない。

 小久保監督が果たして、どのような仕掛けを準備しているのか。

 監督経験がないことを不安視する声もある。それは、このあたりの引き出しや観点を小久保裕紀監督が持っているかどうか、誰も見たことがないからだ。チームが勝利するときは、大会を戦うごとに結束が固まり、勢いがつく例が多い。偶発的にも思えるが、予め準備された火薬に火が点いて実現する場合がほとんどだ。小久保監督がすでにこうした策を打ち、小さな点火を重ねてチームが変わる準備ができているのを祈るばかりだ。