岩渕美克(日本大学法学部教授)

 学校法人「森友学園」をめぐる国有地払下げ問題が連日話題を呼んでいる。しかしこの問題の本質を、多くの国民は理解できているであろうか。国民が内容を知りうるはずの報道が、多くの問題を扱い、かつ多岐にわたっていて、問題の焦点が定まっていないように感じざるを得ない。その原因の一つは、現在の一強多弱といわれる政治状況にあることは間違いない。高い支持率を維持している安倍首相に対する批判につながるものは、できるだけ多く提示しようとする野党の国会戦略にあるといってよい。

 しかしながら、一方では問題に関与している人物の肩書や思想・信条などが、あまりにもユニーク(独特)なことにある。こうした多岐にわたる報道の原因は、メディアによって関心のある領域が微妙に異なるためでもある。受け手の関心に従って、伝達する内容の焦点が異なるからである。

 このような状況では、えてして問題の本質とは異なる話題が先行し、過度に国民の興味を引くことで本来の問題の解決が遅れることや、ひどい場合には問題そのものがうやむやにされてしまうことが少なくない。問題の本質が理解されるようになるころには、国民の関心がすでに薄れてしまうこともある。

 もちろん、その責任は、政治問題であっても、あたかもエンターテインメントの延長であるかのように関心を持つ国民にもある。80年代半ばに登場した「ニュース・ステーション」などのニュース番組やさまざまな政治討論番組は、テレポリティクスと呼ばれた政治の場におけるテレビの影響力の増大を生み出した。この延長に出現した小泉純一郎政権を典型とする劇場型政治は、こうしたテレビを利用しようとする政治家の戦略、それに呼応したメディアの責任が大きいが、そればかりでなく、それに乗っていた国民もその責任の一端を担っていたことを忘れてはならない。
2001年4月、自民党総裁選に出馬した小泉純一郎元郵政相(右)のスーツに付いた埃をとる、応援に駆けつけた田中真紀子議員=神戸・三宮
2001年4月、自民党総裁選に出馬した小泉純一郎元郵政相(右)のスーツに付いた埃をとる、応援に駆けつけた田中真紀子議員=神戸・三宮
 さて今回の問題を整理してみよう。学校法人森友学園に国有地が安価で払い下げられたことが問題の発端である。10億円弱といわれる土地が、なぜ市価の10分の1近くの価格で払い下げられたのかという疑問が生じるのは当然である。誰でも、あるいは政治の身近にいる者であれば最初に勘ぐるのは政治家の関与である。いわゆる「口利き」が行われたのではないのかということ、これこそが問題の本質である。

 また、仮に政治家の関与がないにしても、なぜ安価で払い下げたのかは、窓口の財務省に説明責任がある。国有地であるから国家に損失を与えたことになるからである。こうした点についても、8億円に上るごみ撤去費用を差し引いたとの説明がなされてはいるが、その積算根拠も明確ではない。実質的には、10億円近い土地が1億円余りという法外な価格で学園のものになった理由は、現在までも明らかにはされていない。