「墓トモ」という言葉がある。同じ墓地を契約したことがきっかけとなって始まる友達関係のことだ。「家」や「先祖代々」といった墓を選択せずに、樹木葬や散骨、合葬墓といった、継承者のいない墓(葬られ方)を選択した人たちの間で多く芽生えている関係のようだ。本当に、そんな人間関係が存在するのだろうか? 霊園見学ツアーに同行してみた。レッツ・ゴー、墓トモツアー!

東京駅で集合し、千葉県袖ヶ浦市の寺院へバスで霊園見学ツアー

意外と空気重いぞ?!


 指定された東京駅前に出発予定時刻の30分前に行くと、マイクロバスが待っていた。バスは24席。続々と参加者が集まり、出発までに半分の12席が埋まった。

 同行するのは、曹洞宗の真光寺(千葉県袖ケ浦市)が募った樹木葬墓苑の見学バスツアー。開催されたのは、汗ばむ陽気の昨年5月23日。

 参加者は男性のみと女性のみが1人ずつ。女性同士が2組4人。男女が3組6人。全員で12人だ。新たに墓園を購入するための見学者は8人。残りの4人はすでにお墓を購入済みで、墓参だという。東京、神奈川に住んでいる人が中心だ。

 バスは首都高から東京湾アクアラインに入り千葉県へ。車内の様子は、というと、和気あいあいにはほど遠い。というか、誰も連れ以外とは口をきかない。まあ、知らぬ者同士、そんな簡単に仲良くなれるわけはないか。

 ほぼ1時間10分の行程で真光寺に到着した。

霊園見学というよりピクニック?


 さて、ここから墓苑を管理する「縁の会」事務局の椎野靖浩さんの案内で現地の見学。下草が青々と茂ったなだらかな丘陵に、サクラやクヌギ、コナラなどの木が植えられている。まだ苗木だが、育ったら壮観になることだろう。

 墓園は、旧来型の一般墓地と樹木葬墓苑に分かれている。

 樹木葬墓苑はさらに、区画型の「森の苑」、合葬型の「桜の苑」とに分かれる。

 「森の苑」は、個別の区画に分かれ、プレートを置いた下に遺骨を埋葬するタイプの「樹木葬墓苑」で、1人でも家族でも埋葬できる。 「桜の苑」は、他の人の遺骨と同じ場所に眠ることになる。

 ただ、「森の苑」「桜の苑」とも、肉親や親族などに自分を供養してくれる人がおらず、継承を前提としない、本人(あるいは家族)の一代限りの墓であることを前提につくられた。継承者がいないのが前提だから、契約しても檀家にはならない仕組みにしている点が特徴的だ。

 墓苑全体は約1万平方メートル(1ヘクタール)の広さがあり、まるで公園のよう。とても墓地には見えない。だんだんピクニック気分になってくる。椎野さんのあとをぞろぞろと付いていく参加者一同。

 桜の苑は、こんもりとした小山の周りに、その名の通りサクラの木が植えられている。「春に来たらきれいでしょうねぇ」。誰かのつぶやきに、「そうでしょうねぇ」といった返事が出る。徐々にではあるが、御一行さまの雰囲気が和み始めてきた。

精進料理の食事会

打ち解けてくる参加者たち


 観音堂を案内されて午前の部は終了した。

 食堂でお弁当をいただいた。これ以降、参加者も打ち解け、違うグループ間での会話が弾んでいった。

 墓参で訪れていた姉妹に、見学に来た夫婦が質問する。

 「ここってなかなかきれいですね。いつお決めになったんですか。他のお寺も見ましたか?」

 姉妹の妹、佐藤紀子さん(68)=東京都文京区・仮名=が答える。

 「京都のお寺も見たんですけど、そこは一区画が狭くて。結局、こっちに決めました。ここは、上の区画はお水を持ってお参りするのが大変そうですから下の方にしました。でも、上の方が見晴らしはいいですね」

 佐藤さんは、亡くなった母親のためにこの墓苑を購入したという。子供はなく姉ともども、いずれはこのお墓に入るのだそうだ。

 早くに亡くなった佐藤さんの夫は、島根県にある夫の実家の墓に入っている。「でも夫の実家も代替わりして、すっかり疎遠。今さら同じお墓には入れないですよ」と笑う。

 初対面同士で会話が弾む佐藤さんに、「『墓トモ』って言葉、知っていますか?」と聞くと、「ああ! 確かにそんな感じかもしれませんね」。

新米の炊き出し
 ツアーに長男と一緒に参加した三田和子さん(69)=横浜市・仮名。「主人は長男なんですけど、次男の方が両親の面倒をみていたので、お墓も次男に譲ってしまいました。なので、お墓を探さないといけない。ここは良いところですね」と気に入った様子。

 三田さんは山歩きが趣味だといい、同年代のハイキング友達も多いという。「他の友達にも声をかけてみようかしら」。もし、友人も同じ墓苑に入ることになれば、趣味の友達が「墓トモ」になることになる。

 徐々に打ち解けていく雰囲気は例えるなら「住宅展示場」のよう。「先祖代々」「家」といった関係を離れて、「いずれは“ご近所さん”になるかもしれない人たち」が醸し出す共通の雰囲気なのかもしれない。

 バスが東京駅に戻ったのは午後2時半。朝はぎこちなかった人たちが、「もし、またお寺で会うかもしれませんね」と、あいさつを交わして別れていった。

 「墓トモ」の縁。ツアーで見た光景は、ほんの端緒に過ぎない。

 もし、契約まで行った場合には、寺側が「墓トモ」の新しい縁づくりをサポートする態勢をとっている。契約者同士の縁づくりは、真光寺だけでなく、合葬墓など類似の形態の墓を持つ多くの寺で態勢が整えられている。

 真光寺の場合は、購入者は「縁の会」の会員になる。「『同じ場に終のすみかを選ぶ』、という縁によって結ばれた人たちが協力して、会や墓を守り、共に供養しあうことを意図した会です」と寺では説明する。

「植樹祭」法要
 縁の会に入ると、法話を聞く集いや、苑内の新たな樹木を植える催し、従来の檀家(だんか)の畑を使った落花生の収穫祭といった行事に参加できる。また、会員同士の結びつきを強めるため、檀家との合同旅行も計画。これまでに永平寺(福井県)や東京スカイツリー(東京都)などに行っている。

 「今年3月のスカイツリー旅行は約50人が参加しました。中にはスカイツリーのある墨田区にお住まいの会員さんもいましたよ」

 「1人暮らし」「子供や親戚の世話になりたくない」「先祖代々の墓に入りたくない」…。理由はさまざまだが、継承者を持たない一代限りのすみかに決めたことは契約者同士で似かよう。選択肢が共通だから、催しは和やかで、かつ、絆は強い。

 「墓トモ」の関係で結ばれる、縁の会に入会している人は1000人にもなる。

 記者も次男で入る墓がないし、今のところ子供もいない。この先、どうしようか考えさせられる一日となった。


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